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人民元が2日連続の切り下げ!中国は世界金融市場の前提を崩壊させかねない=元ファンドマネジャー・近藤駿介

中国人民銀行(中央銀行)は12日午前、人民元相場の中間レートを1米ドル=6.3306元に設定。前日(6.2298元)に比べ1.6%の元安/ドル高水準で、2日連続の人民元切り下げとなりました。これを受け日本の株式市場も昨日に引き続き急落しています。今後、中国の為替政策が世界経済や株価に与える影響は?元ファンドマネジャー・近藤駿介氏が解説します。

【関連】1回目の切り下げがあった11日の人民元・中国株概況はこちら

人民元切り下げ~小さな切り下げが与える大きな衝撃

ドル高の副産物といえるのかもしれません。中国人民銀行は11日、人民元を2%切り下げると発表しました。

この1年間、米ドルはFRBのテーパリング、利上げ観測を背景にドル指数ベースで約17%上昇してきました。人民元レートは基本世界で最も強い通貨米ドルに連動するよう為替介入によってコントロールされてきましたので、この1年間で対円では約16.5%、対ユーロでは約15.6%上昇する結果となりました。

こうした人民元レートの動きを反映して、中国の1~7月の貿易額は対米国は2.8%増であったのに対して、対日本では11.0%減、対EUでも7.5%減となり、中国経済の足を引っ張る結果になりました。

今回、人民銀行が人民元の切り下げに踏み切ったのは、こうした国内要因があったことは間違いないところです。

人民元/円 5分足(SBI証券提供)

人民元/円 5分足(SBI証券提供)

日経平均株価 5分足(SBI証券提供)

日経平均株価 5分足(SBI証券提供)

しかし、中国の国内要因として人民元切り下げはあり得る政策的選択肢だと言えますが、世界第2位の経済大国であり、世界第2位の経常黒字国である中国(2014年、第1位はドイツ)が国内要因だけで元切り下げに踏み切るというのは、国際秩序を乱す行為だと見做されても仕方がありません。

詳細は「近藤駿介の実践資産運用サロン」(https://www.facebook.com/groups/681769101860787/)に譲りますが、中国が国内要因を優先する身勝手な政策を打ち出したことで、国際金融市場は不安定な状況に陥る可能性が出てきていることには注意が必要です。

米国の2015年1-6月期の貿易赤字は前年同期比0.6%の拡大でしたが、中国に対する赤字は前年同期比で9.8%拡大しており、6月単月の貿易赤字438億ドルのうち対中の貿易赤字は315億ドルと72%を占めています。

米財務省は4月に公表した半期為替報告書で、中国の為替政策は米国をはじめとする貿易相手国への打撃になると批判したうえで、中国は過去10年にわたり人民元を切り上げてきたが、人民元は依然として「著しく過小評価」されていると指摘していました。

こうした状況下で人民銀行が人民元の切り下げに踏み切ったということは、世界最大の経済大国と、世界第2位の経済大国の間のすきま風が強くなることを意味します。これまで国際経済は、世界最大の経済大国米国と、世界第2位の経済大国であった西ドイツ、そして日本が協調してその秩序を保ってきました。

しかし、政治体制の異なる中国が世界第2位の経済大国になったことで、世界最大の経済大国と第2位の経済大国が強調して国際秩序を保つということは期待できなくなりました。

同時に、中国が目指していた「人民元の国際化」と「人民元経済圏」構想も、今回の国内要因に基づいた人民元切り下げによって自ら摘み取ってしまう結果になりました

わずか2%の通貨切り下げですが、その衝撃は「強い人民元」「人民元の国際化」「人民元経済圏」といった世界の金融市場の前提を崩壊させかねない大きなものになるかもしれません。

近藤駿介~金融市場を通して見える世界』(2015年8月12日号)より一部抜粋
※太字はMONEY VOICE編集部による

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ファンドマネージャー、ストラテジストとして金融市場で20年以上の実戦経験を持つと同時に、評論家としても活動してきた近藤駿介の、教科書的な評論・解説ではなく、市場参加者の肌感覚を伝えるマガジン。

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