fbpx

海外メディアが日銀を完全無視へ。詭弁が通じず、黒田日銀がついに「敗北宣言」=近藤駿介

完全なる敗北宣言

今回の金融政策決定会合で黒田日銀は市場にサプライズを起こすことはできなかった。それどころか、物価見通しを下方修正するなかで、実質的な「マイナス金利政策の縮小」に追い込まれた。

黒田日銀はこれまで今後の具体的な追加緩和の手段として、「マイナス金利の深掘り」と「長期金利操作目標の引き下げ」が「中心的な手段」になるとの考えを示してきた。

その黒田日銀が、一転「強力な金融緩和継続のための枠組み強化」で、「金利は、経済・物価情勢等に応じて上下にある程度変動しうるもの」という表現で金利上限の引き上げを容認すると同時に、「マイナス金利が適用される政策金利残高を、長短金利操作の実現に支障がない範囲で、現在の水準から減少させる」という表現でマイナス金利の縮小を図ることを決めたものである。

つまり、「強力な金融緩和継続のための枠組み強化」の実態は、黒田日銀が「今後の追加緩和の中心的な手段」として来た「長期金利操作目標の引き下げ」と「マイナス金利の深掘り」の両方を放棄する「敗北宣言」だといえるのである。

市場をコントロールできなくなった黒田日銀

市場にサプライズを起こすことで存在感を発揮しようとしてきた黒田日銀が、サプライズを起こす能力を失ったということは、市場をコントロールする能力を失ったことと同義である。

日銀は昨年から「金融緩和を強化すれば2%の物価上昇は達成できる」と繰り返すオオカミ少年を政策委員、副総裁に就任させてきた。しかし、日銀がいくらその場その場を詭弁で乗り切ったとしても、結果が伴わないことで市場はもうオオカミ少年のいうことには耳を貸さなくなっている

WSJが日銀の金融政策決定会合について全く報じていないのも、日銀をオオカミ少年とみなしているからかもしれない。

国内では「異次元の金融緩和」の副作用として、金融機関の収益悪化市場の流動性の低下などの懸念が指摘されている。

しかし、黒田日銀が最も警戒しなければならない「副作用」は、これまで詭弁を繰り返し過ぎたことで、市場が日銀の意思に従って動かなくなること、日銀が市場のコントロール能力を失って来ていることである。


有料メルマガ『元ファンドマネージャー近藤駿介の現場感覚』好評配信中。ご興味をお持ちの方はぜひこの機会にバックナンバー含め今月分すべて無料のお試し購読をどうぞ。

<新刊情報>

この記事の著者・近藤駿介さんの新刊『1989年12月29日、日経平均3万8915円〜元野村投信のファンドマネージャーが明かすバブル崩壊の真実』が発売されました。日経CNBCのキャスターが選ぶ今年上半期の「この一冊」にも選ばれています。ぜひお手にとってご覧ください。

<著者コメント>

1990年1月から始まったバブル崩壊は、日本経済を一変させたにもかかわらず、その原因については「株価が割高な水準まで買われ過ぎた」「日銀が金融緩和を続け過ぎた」という曖昧なもので片付けられ、歴史上の事実の一つとして葬られようとしています。

本著は野村投信の日本株、先物、オプショントレーダーとしてバブル崩壊を経験した著者が、何故1989年12月末に向かってバブルが醸成され、何故1990年1月からバブル崩壊が始まらなければならなかったのか、その背景を明らかにしようと書き下ろしたものです。

本著を読んで頂けば、バブル崩壊が「株価が割高な水準まで買われ過ぎた」「日銀が金融緩和を続け過ぎた」というような曖昧なもので起きたのではなく、1980年代から始まった金融の国際化の流れに政策当局や大手証券会社が対応しようとした壮大なドラマがあったことが分かって頂けると思います。

【関連】日本円での貯金はもはや自殺行為。必ず来るインフレが「老人の国」日本を殺す=鈴木傾城

<初月無料購読ですぐ読める! 8月配信済みバックナンバー>

※2018年8月中に初月無料の定期購読手続きを完了すると、以下の号がすぐに届きます。

・日銀による「敗北宣言」(8/6)
いますぐ初月無料購読!

<こちらも必読! 月単位で購入できるバックナンバー>

※初月無料の定期購読のほか、1ヶ月単位でバックナンバーをご購入いただけます(1ヶ月分:税込3,996円)。

7月配信分
・旬を過ぎた中国とEU、旬を迎える日本(7/30)
・トランプ政権からの「独立性」が問われるFRBと安倍政権(7/23)
・2018年下期入りと共に見えて来た「主菜」と「刺身のツマ」(7/17)
・佳境を迎えた戦い〜W杯、貿易戦争、そしてFRB(7/9)
・「謎」は解けたが長期金利は上昇しなかった(7/2)
2018年7月のバックナンバーを購入する

6月配信分
・地政学リスクを抜けたらリスクオフだった(6/25)
・真打「貿易戦争」の登場 〜 影響を受ける中国と日本(6/20)
・「高債務国から逃げるマネー」が金利差拡大下での円安の阻害要因?(6/11)
・成功に向かう米朝首脳会談と決裂したG7(6/11)
・米朝首脳会談の陰て台頭した「逆イールド」と「中立金利」(6/4)
・株式投資における「失敗の母」(6/2)
2018年6月のバックナンバーを購入する

5月配信分
・地政学リスクは百難隠す(5/28)
・政治的イベントと変化の気配を見せる金融市場(5/21)
・「Show Time」の裏で生じ始めた乖離(5/14)
・関連性がある興味深い2記事(5/13)
・遅行指数となった物価指標 〜「behind the curve」か「over kill」か(5/7)
・融和ムードの中で再び注目を集めるFRB(5/1)
2018年5月のバックナンバーを購入する

4月配信分
・新著「1989年12月29日 日経平均3万8915円」のお知らせ(4/27)
・安倍退陣を意識し始める日本市場と、「謎」が解け始める米国物価(4/23)
・大国間の暗黙の了解と「トランプが通れば道理が引っ込む」(4/16)
・顕在化してきたトランプリスクと、苦境が迫るパウエルFRB(4/9)
・キューバ危機からの教訓 〜 JFKを演じようとしているトランプ大統領(4/2)
2018年4月のバックナンバーを購入する

3月配信分
・暴れ馬「トランプ」を乗りこなせるのか不安を感じさせたFOMC(3/26)
・内憂外患 〜 底が見えた安倍政権(3/24)
・「ゴルディロックス相場再来」というはかなき夢(3/19)
・「経済統計の綾」と「株式市場の綾」(3/12)
・「踏襲されたイエレン路線」と「踏襲されなかったイエレン路線」(3/5)
2018年3月のバックナンバーを購入する

2月配信分
・米国株安を招いた「誤解」と、これからの「誤解」(2/26)
・日本人の期待を裏切る動きを見せる金融市場(2/19)
・変化する株式市場とFRB、変化を求めない日銀(2/12)
・「もはや低インフレとは言えない米国」を織り込み始めた市場と、それに苦しむ日本(2/5)
2018年2月のバックナンバーを購入する

1月配信分
・金融市場を知り尽くしたトランプ政権と、信頼を失った日銀総裁(1/31)
・「トランプ減税に」に反応し始めた経済 〜 ハト派寄りになったFRBと取り残される日本(1/22)
・ロケットスタートを切った2018年 〜 膾吹きに懲りて羹を飲む(1/15)
・2017年の延長線上で始まった2018年 〜 リスクは国内にあり(1/9)
2018年1月のバックナンバーを購入する

12月配信分
・ビットコイン急騰を演出した「懐疑の中で育ったトランプ相場」(12/25)
・割高になり過ぎた都心不動産 〜 メザニンで不動産市況は救えない(12/23)
・税制改革に対する過度の期待とFRBが抱えるジレンマ(12/18)
・リスクに備えることを忘れたリスク(12/11)
・2018年は2017年の延長線上にある?(12/4)
2017年12月のバックナンバーを購入する

【関連】豪雨に負けない森はどこへ…。今国会で成立「森林経営管理法」が日本の山と林業を殺す=田中優

【関連】これはもう実質的な「利上げ」。なぜ日銀は異例の緩和策修正に踏み切ったのか?=斎藤満

【関連】2019年から日本国は衰退へ。海外メディアも一斉に警告「少子高齢化という時限爆弾」

1 2 3 4 5

本記事は『マネーボイス』のための書き下ろしです(2018年8月7日)
※記事タイトル、本文見出し、太字はMONEY VOICE編集部による

初月無料お試し購読OK!有料メルマガ好評配信中

元ファンドマネージャー近藤駿介の現場感覚

[月額4,070円(税込) 毎週 月曜日(祝祭日・年末年始を除く)]
時代と共に変化する金融・経済。そのスピードは年々増して来ており、過去の常識では太刀打ちできなくなって来ています。こうした時代を生き抜くためには、金融・経済がかつての理論通りに動くと決め付けるのではなく、固定概念にとらわれない思考の柔軟性が重要です。当メルマガは、20年以上資産運用、投融資業務を通して培った知識と経験に基づく「現場感覚」をお伝えすることで、新聞などのメディアからは得られない金融・経済の仕組や知識、変化に気付く感受性、論理的思考能力の重要性を認識して頂き、不確実性の時代を生き抜く一助になりたいと考えています。

いま読まれてます

この記事が気に入ったら
いいね!しよう

MONEY VOICEの最新情報をお届けします。

この記事が気に入ったらXでMONEY VOICEをフォロー