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海外メディアが日銀を完全無視へ。詭弁が通じず、黒田日銀がついに「敗北宣言」=近藤駿介

銀行の収益悪化に配慮した政策変更ではない?

前述の通り、6月時点で372兆円ある日銀当座預金のなかでマイナス金利が適用されているのは約25兆円に過ぎない。興味深いのは、どの業態がマイナス金利を適用されているかというところである。

これを見ると、都市銀行には全くマイナス金利が適用されていない。さらに、第二地銀を含む地方銀行もマイナス金利が適用されている額は910億円に過ぎない。

実際にマイナス金利が適用されているのは国内銀行ではなく、外国銀行(約3兆円)、信託銀行(8.4兆円)、その他準備預金制度適用先(11.6兆円)となっている。

日銀のマイナス金利政策に関しては、銀行の収益悪化を招く要因になっていることが指摘されているが、実際には銀行はほとんどマイナス金利の適用を受けていない。

つまり、今回の「マイナス金利政策の縮小」は銀行の収益に対する副作用に配慮したのではなく、他の理由で行われた可能性が高いと考えるのが自然な状況である

守られる金融機関は…

そうした観点から注目されるのは、約25兆円のうち約11.6兆円を負担し、最も多くマイナス金利を適用されている「その他準備預金制度適用先」である。

この「その他準備預金制度適用先」に含まれるのは信用金庫の他、いわゆるネット銀行やセブン銀行、そしてゆうちょ銀行である。

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その他準備預金制度適用先には、信用金庫(預金残高1,600億円超)、ジャパンネット銀行、セブン銀行、ソニー銀行、楽天銀行、住信 SBI ネット銀行、じぶん銀行、イオン銀行、大和ネクスト銀行、オリックス銀行、新生銀行、あおぞら銀行、シティバンク銀行、SBJ 銀行、整理回収機構、農林中央金庫、ゆうちょ銀行を含む(日銀公表資料より作成・抜粋)。

消費者向けの無担保ローン(カードローン)以外の貸出業務を認められていないゆうちょ銀行は、必然的に日銀預け金の比率が高くなる。2017年度末のゆうちょ銀行の運用資産総額は207.7兆円のうち、貸出金は6.1兆円と2.9%に過ぎないのに対して、日銀預け金を含む「預け金等」は49.3兆円と23.7%を占めている。

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ゆうちょ銀行への忖度か

ゆうちょ銀行の資産が、6月末で約160兆円の運用資産を有する世界最大の機関投資家であるGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)をも上回っていることを考えると、ゆうちょ銀行が最もマイナス金利の適用を受けている額が大きいことが想像される。

想像の範囲でしかないが、日銀が今回「ステルスマイナス金利政策縮小」に踏み切ったのは、貸出業務ができないゆうちょ銀行の負担を軽くするという忖度が働いたからのように思える。

しかし、マイナス金利の適用範囲を縮小しても、貸出業務が認められていないゆうちょ銀行はおろか、マイナス金利の適用をほとんど受けていない銀行の行動には何の影響も及ぼさない。

つまり、「政策金利残高の見直し」と称したマイナス金利適用規模の縮小は金融政策としては何の意味もないものであり、影響が及ぶのはゆうちょ銀行のコストだけだからである。

トランプ大統領からの予想外の介入に対しても忖度せずに継続的利上げ方針を貫くFRBに対して、日銀の金融政策には政府やゆうちょ銀行に過大な忖度が透けて見える。中央銀行の独立性を重視するWSJが忖度経済で中心的な役割を果たす日銀の金融政策を全く報じなかったのは当然なのかもしれない。

Next: 市場をコントロールできなくなった黒田日銀の完全なる敗北宣言

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