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誰がフランス抗議デモを扇動?カラー革命やアラブの春に近い「黄色いベスト」運動=高島康司

外部勢力の介入か

こうした背景から見ると、今回の「黄色いベスト運動」は、起こるべくして起こった抗議運動である。それは、大多数の国民が納得しない大胆な改革を断行するマクロン政権に対する怒りと苛立ちの現れである。

しかし、こうした抗議運動が体制転換のための道具として使われてきたのも事実である。2014年の「ウクライナ政変」、2011年から拡大した「アラブの春」、2011年のリビアの「カダフィー政権の崩壊」、2005年の旧ソビエト共和国で起こった「カラー革命」などはそうした例だ。

あらかじめ存在していた国民の社会的な不満に火をつけ、体制転換へと誘導したアメリカやイギリスの情報機関が関与していたことは、だいぶ後になってから事実が明らかになることが多い。

たとえば、10月15日の英紙「ガーディアン」は、1970年代から現代まで、イギリスの警察機関は124件の抗議運動に工作員を送り込み、政治的な目的でこうした運動を利用したことを暴露した。また、リビアで起こった抗議運動を煽って暴力的な革命へと誘導するために、イギリスの特殊部隊が送り込まれていたことは、2012年に明らかにされている。また、英米の情報機関やNGOの関与を取材した秀逸のドキュメンタリーも数多く公開されている。

カラー革命を先導した勢力

具体的な例を見て見よう。2003年から2005年にかけて旧ソビエトの共和国で起こった「カラー革命」だ。これにより、各国の親ロシアの政権が崩壊し、欧米を支持する政権に転換した。「カラー革命」の真実はあらゆる資料から明らかになっている。

「カラー革命」が起こったグルジア、ウクライナ、キルギスなどの国々には、かなり早いうちから米国系のNGOが国内で活動しており、抗議運動を財政面、資金面から強力に支援していた。

それらは、米国務省系の人権団体、「フリーダムハウス」、共和党系の「国際共和党機関」、民主党系の「全国民主党機関」、米政府系の「米国国際発展機関」、そして投資家、ジョージ・ソロスの「オープンソサエティー」などの組織である。

グルジア、ウクライナ、キルギスでは「クマラ」、「ポラ」、「ケルケル」などの青年運動組織が体制転換を目指す革命運動を主導した。彼らは主要な大学のキャンパスで大学生を中心にリクルートし、大学生にデモの組織の方法、抗議集会の運営方法、民衆への呼びかけ方などを訓練した。

こうした青年の抗議団体を財政的に資金援助したのが、上記のアメリカのNGO組織だった。彼らは、資金援助のみならず、青年の抗議団体そのものの結成にも深くかかわっていることも知られている。これがカラー革命の裏の事情である。このようにカラー革命は、明らかにアメリカの工作で実現した可能性が極めて高いのである。

黄色いベスト運動の場合は?

では、いまの「黄色いベスト運動」はどうなのだろうか?「カラー革命」と同じように、アメリカ、ないしはイギリスの支援を受けた外部の訓練組織が介入している可能性はあるのだろうか?

いまのところ、運動がリアルタイムで進行中なので、これを具体的に示す証拠はまだ出てきていない。現在、大手のネットメディアの信頼できる調査ジャーナリストが現地で取材しているので、これから裏にある事実が次第に明らかになるはずだ。

おそらく、当初は平和的な運動としてスタートしたものを暴徒化させた極右と極左の活動家のなかに、前述のような組織でトレーニングされたか、またはCIAのようなアメリカの情報機関の工作員が介入しているのかもしれない。この可能性は高いと筆者は見ている。

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