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誰がフランス抗議デモを扇動?カラー革命やアラブの春に近い「黄色いベスト」運動=高島康司

マクロンへの強い不満

こうした両極端の集団が行動を共にできるのは、現在のマクロン政権に対する強い不満を共有しているからである。

伝統的に国民の力が強いフランスは、長年所得の再配分政策に重点をおいていた。手厚い社会保障と比較的に充実したセーフティーネットである。しかし、こうした政策を維持するために、政府債務が拡大した。さらに、企業による労働者解雇の規制や週35時間労働制の法制化など、労働者保護を目的にした規制が多く、企業から見ると投資を困難にさせる要因になっていた。このため低い経済成長率高い失業率が常態化していた。

マクロン政権はこうした状況を打破しようと、大胆な改革を打ち出した。企業の解雇手続きの簡素化不当解雇補償額の上限設定などの労働市場改革を実施した。

さらに、法人税率の段階的な引き下げ、金融資産にかかわる富裕税の廃止、投資やイノベーションの促進、デジタル経済化の推進などの改革を断行した。

要するに、労働市場の大幅な規制緩和と企業や投資家への減税により、企業が投資しやすい環境の整備を目標にしたのだ。こうした改革によって投資が促進され、企業活動が活性化すると、経済も成長し雇用も伸びると考えた。

時代に逆行する「グローバリゼーション」政策に国民が激怒

こうした改革は、80年代後半のサッチャー政権下のイギリスや、メルケル政権のドイツ、さらに2000年代前半の日本の小泉政権による「構造改革」など先進国の多くの政権が実施し、経済成長を軌道に乗せることに成功している。

それとほぼ同じ内容のことをマクロン政権は行おうとしているに過ぎない。

しかし、改革が実施される歴史的なタイミングが問題だ。イギリス、ドイツ、そして日本が実施したこのような改革は、まさに自由な市場原理に基づくグローバリゼーションの改革だ。10年前の金融危機以前であればそれなりの支持も得られた。

だが、いまは反グローバリゼーションのトランプ大統領やバーニー・サンダースといった人々が象徴するように、グローバリゼーションが作りだした極端な格差と中間層の分解という現象に直面し、グローバリゼーションの矛盾の是正がもっとも重要な政治的目標になっている。

そのようなとき、格差の拡大中間層の貧困化という結果が見えている改革を支持するフランス国民は少ない。むしろ、あまりに早急に断行された改革が引き起こした問題のほうが目立ち、抗議運動につながったと見てよいだろう。

Next: 抗議運動を扇動するは外部勢力か。事実はだいぶ後になってからわかる…

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