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また忖度。勤労統計「データ改ざん」で露呈した見せかけの賃金上昇と雇用改善=斎藤満

人件費は増えていない

その1つは国税庁が把握する労働者の賃金(年収)が低迷していることにも表れますが、この資料はいささか古いので、もう1つ、財務省の「法人企業統計」でチェックできます。民主党政権最後の2012年7-9月期と、昨年7-9月期の人件費(従業員給与)とを比較してみましょう。

昨年7-9月の3か月間に実際に企業が支払った「人件費」は46兆円、民主党政権最後の12年7-9月期が42.9兆円なので、6年で7.2%、年率1.2%の増加となります。もっとも、役員報酬が増えているので、従業員給与で比較すると、6年前の28.8兆円から昨年は30.1兆円にとどまり、6年で4.5%、年率0.8%増にとどまっています。この間、従業員数が110万人、3.2%増えているので、1人当たりの人件費増はほぼゼロです。

この間の物価上昇、消費税引き上げを考えれば、1人当たりの実質人件費はマイナスになっています。

一方、企業の経常利益は76%増です。政府日銀は雇用賃金の改善を強調し、所得から支出への前向きな循環が機能していると言いますが、実質所得がマイナスの状態で前向きな循環が働くわけがありません。安倍政権は労働者の犠牲のもとに企業利益を支援しただけ、ということになります。

GDPでもデータ水増し

政府のデータ水増しはまだあります。1つは「実質輸出」のかさ上げです。日銀は製品の機能向上分を「実質値下げ」と説明して独自の企業物価、輸出物価を作成していますが、機能向上分だけ現実の物価よりも低い水準になります。これで実質値を計算すると、それだけ実質輸出が大きくなります。

例えば、パソコンの実際の輸出が100万台でも、機能向上分を「値下げ」として扱うので、実質のパソコン輸出は150万台、などとなります。このため、財務省の貿易統計で示される「輸出数量」の伸びよりも、日銀の「実質輸出」の伸びが高くなり、内閣府もこれを使ってGDPを計算し、輸出の実質ベースの増加がかさ上げされています。

それだけではありません。安倍政権は2020年の名目GDP目標600兆円を掲げたものの、現実の名目GDPはなかなか増えなかったため、突然「研究開発費」もGDPに参入することを決め、これにより名目GDPが20兆円もかさ上げされました。それでも昨年7-9月の名目GDPは年率546.7兆円に留まり、政府目標の600兆円達成はほぼ不可能です。

Next: データの改ざんのみならず、データの解釈までゆがめている…

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