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異次元緩和から6年目、ついに地銀が赤字となる段階に来た=吉田繁治

<異次元緩和の副作用>

地銀の赤字、保険会社の利益難は、2%のインフレを目的にしている異次元緩和の副作用です(2013年4月から約6年になります)。

2017年2月に出した『財政破産からAI産業革命へ(PHP研究所』で、日銀が異次元緩和を続けることができるのは、ゼロ金利により「銀行が赤字になるときまで」と書きました。

2018年には実際に、地銀の半分が2期連続の赤字になっています。今後、本業が黒字に転換する見込みは、(全く)ありません

銀行と保険会社は、「海外と国内の投資信託の販売手数料」に希望を託していまが、これは「一時的な幻」で終わることです。

<ヘッジファンドの元本も減少>

世界の投資家と金融機関から300兆円の元本資金を集め、約10倍のレバレッジで3,000兆円の投資信託を作っているヘッジファンドの元本資金に「引き揚げ」が起こっているからです。

原因は、簡単なことです。「ヘッジファンドが5%以上の利益を出せず、世界の株価が下がった昨年10月からは、運用益がマイナス」だからです。

損をする投資信託からは、投資家が預託資金を引き揚げるのが当然でしょう。投資信託も、株価が上がるとき増えるものです。

<メガバンクは円高の損>

仮に1ドル105円の円高(5%)になると、円安で恩恵を受ける三大メガバンクも「本業+本業外の経常利益」が赤字になるでしょう。

米国債の2%の金利利益(イールドスプレッド)が、「5%のドル安/円高」だとマイナス3%になり、一瞬で吹き飛んで2%の損が出るからです。

メガバンク合計で150兆円の米国での運用があるとすると、「5%のドル安/円高」での損は3兆円です。金利の利益の実現には、時間がかかります。しかし通貨変動の利益と損は、一瞬で生じます。

総じて言えば、異次元緩和のマイナス金利、ゼロ金利の副作用から「銀行が赤字から脱却できない時代」になりました。

金利が上がれば銀行と保険会社の利益が回復するかと言えば、そうではない。そのときは、2016年までは益出しができた国債600兆円の価格が下がるからです。銀行の赤字は、金融危機の新たな火種です。

金利の上昇と国債価格に問題(偽装)がある、内閣府の『中長期の経済財政に関する試算』

日銀は異次元緩和を停止して、米国FRBの2014年10月以降のように「利上げ」をしなければならない時期に来ています。

ところが異次元緩和を停止して、金利を上げることはできせん。ゼロ%の金利が上がることは国債価格が下がることです。8年債未満はマイナス金利、10年債の0%金利は、今後、(時期は別にして)上がるしかない。

<金利上昇と国債価格の関係>

(1)1%の金利上昇;
1%金利が上がると、長短合計の国債価格(1,000兆円)は7.5%下がって、日銀に3.3兆円の損、金融機関に4.2兆円の損が出ます。

(2)2%の金利上昇:
2%上がると、保有国債の損は13.8%に拡大し、日銀に5.52兆円、金融機関に7.92兆円の損が出ます。

(3)3%の金利上昇:
3%上がると、保有国債の損は19.4%に拡大し、日銀に7.76兆円、金融機関に11.64兆円の損が出ます。

(注)損の計算は、1÷(1+金利上昇率×平均残存期間8年)です。現在の10年債の金利がほぼ0%で、長短国債の平均残存期間が8年なので計算は単純です。日銀が1000兆円の国債の約40%、「金融機関(海外が11%)+保険会社」が、60%を持っています。

日銀は、「ゼロ金利からの離脱」ができないのです。

Next: 政府の財政の方針を決める資産は、はたして正しいのか?

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