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世界が認める景気鈍化を、なぜ日本政府だけは認めない?海外投資家は日本株を投げ売りへ=近藤駿介

苦しい立場のFRB

しかし、FRBは苦しい立場にある。それは、予想外の決裂した米朝首脳会談を終えたトランプ大統領が、帰国してすぐに「利上げを好み、量的引締めを好み、非常に強いドルを好む紳士がFRB内に1人いる」と、FRB批判をし始めたことだ。

すでに「漸進的利上げ」を先送りし、バランスシート縮小を年内に止めることを明言しているパウエルFRB議長にとって、ドル高を止める手立てはないのが実情だ。CMEのFed Watchでも市場が見込む年内利上げ確率は0%。それどころか、年内に利下げが実施されるという見通しが20%前後に達しており、FRBの利上げ見通しを背景にドル高が進んでいるわけではないからだ。

為替というのは所詮「物々交換」である。「物々交換」ということは、交換相手の価値によって交換レートが変動するということだ。言い換えれば為替の価値は「絶対評価」ではなく「相対評価」で決まるということ。

FRBは「漸進的利上げ」を一旦見送り、バランスシート縮小を年内に止める方針を示すなど「ハト派」色を強めてきた。しかし、米国経済に対する見通しを明確に見直したわけではなく、現時点ではあくまで「金融引締め政策の停止」に過ぎない。こうした中で中国やECBが経済成長の鈍化を認め、金融緩和姿勢を明確にし、「FRB以上のハト派」姿勢を見せたことで、ドルの「相対的価値」は高まってしまっており、それがドル高を招いている。

2月の雇用統計を始め、米中通商交渉や政府機関の一部閉鎖によるノイズによって経済指標は強弱入り乱れ、経済の正しい姿が見えにくくなっている今、FRBとしても米国経済の方向性を断言しにくい状況にある。そうした中でのトランプ大統領からの口撃は、FRBがより「ハト派」姿勢を見せることを難しくしてしまっている。明確な理由なしに金融緩和姿勢を見せてしまえば、大統領の圧力に屈した格好になってしまうからである。

日本政府はまだ「戦後最長の景気回復」と言っている

世界の主要国が経済見通しを下方修正したり、金融政策を見直したりしている中で、わが道を行くのが日本である。

1月の景気一致指数が3か月連続でマイナスとなり、機械的に景気の基調判断が「下方への局面変化」に変更されたことが大きな話題となっている。

3か月連続マイナスとなった景気一致指数は、構成する9つの指標の内、速報が公表済みの7つの指標全てがマイナスになるという完全マイナス状況になっている。さらに先行指数はすでに5か月連続でマイナスになっており、経済指標面からは景気が鈍化局面に転じていると見るのが自然な状況になっている。

それにもかかわらず、政府は「景気の回復基調は変わらない」と依然として「戦後最長の景気回復」が続いていることを強調する強気の姿勢を崩していない。

国民の8割が「戦後最長の景気回復」を実感できていないという「景況感」の悪化に加え、経済指標面でも景気後退が示され、政府だけが景気回復を実感するという摩訶不思議な状況になっている。

もちろん、「戦後最長の景気回復」の中で「異次元の金融緩和」を続けるという矛盾した政策を採り続けてきた日本に、景気が鈍化に転じたところで打ち出せる政策はほぼないのが実情である。

Next: 海外投資家は日本株を投げ売りへ。もう日本に景気回復を演出する余力はない…

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