米利上げにより、米中間の貿易不均衡はさらに拡大
アメリカが利上げすれば、為替はドル高方向に振れやすくなる。政治的な要因が大きいので何とも言えないが、人民元は対ドルレートで割安となりやすくなる。
10月までの累計では、中国のアメリカへの輸出は5.2%増であり、輸入は6.5%減であるが、人民元安となれば米中間の貿易不均衡はさらに拡大してしまう。
そのことよりも、アメリカの金利上昇は巨額のドル債務を抱える途上国に対して金利負担増を強いる上に、資金の流出を招き、それに対抗するために、各国は金利を上げざるを得なくなる。
また、多額の債券を保有する欧米の金融機関に損失がでることになり、それを恐れて資産を早めに引き上げようとすれば、途上国の景気はさらに大きな下押し圧力がかかってしまう。
アメリカにとってもここは正念場であり、ここで利上げが出来なければ、日本と同じように超低金利が恒久的に続く状態に陥ってしまう。ここは金利体系の正常化を果たす最後のチャンスなのかもしれない。
米国は世界経済が混乱する中でも利上げを続けられるか?
とはいえ、アメリカの利上げは世界経済の混乱をもたらす可能性がある。それによって、アメリカは2度目、3度目の利上げを行うことなく、利下げを強いられるようになるかもしれない。
景気が過熱気味であり、インフレ圧力も強まった段階での利上げは株式市場にとってもプラスである。しかし、今回はそうではなく、金利体系の正常化のための利上げである。
もし、中国の景気が上向いているなら、世界における需要を吸引することで、世界の景気減速圧力を軽減することができるのだが、現状ではその逆である。中国は徹底的に構造改革を進めようとしており、そのことが輸入の減少を通じて他国に景気の下押し圧力を与えている状態である。
頼みの綱は、EU、日本による金融緩和の加速である。もし、サプライズの緩和があれば、世界の株式市場は大きく上昇する可能性がある。
いずれにしても、12月の株式市場は、香港、日本、アメリカともに、大きな変動に見舞われそうである。
(12月5日作成、有料メルマガから一部抜粋)
『中国株投資レッスン』(2015年12月10日号)より一部抜粋
※太字はMONEY VOICE編集部による
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TS・チャイナ・リサーチの田代尚機がお届けします。中国経済や中国株投資に関するエッセイを中心に、タイムリーな投資情報、投資戦略などをお伝えします。中国株投資で資産を大きく増やしたいと考える方はもちろん、ただ中国が好きだという方も大歓迎です。