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FRBの「無慈悲な利上げ」を市場が悟る時、悲劇的なマネー逆流は始まる

12月の次は3月、FOMC開催月は「毎回30bps利上げ」の可能性

では、実際どうなりそうなのかについて考えましょう。

まず、FOMCメンバーの入れ替え効果です。先週の相場見通し記事で書いたように、来年からタカ派が一気に増えます。一方、最もハト派のエバンス総裁の来年末のFFレート見通しは1%以下が望ましいと言っていましたね。

先ほども書いたように、FOMCの構成は来年からタカ派が一気に増えますので、ドット分布の平均値も今より挙がる可能性が高いのです。

賃金上昇率が既に2%に到達して、年明けから原油安の影響が無くなるということは、早い段階で2%の金利水準にしないと賃金インフレが加速するということになります(厳密には違いますが大雑把に考えてください)ので、私は来年末のFFレートは2%以上が妥当だと考えています(相場見通しをする前提ではなく、過熱を防ぐために妥当という意味)。

私がややタカ派とすると、来年以降のドット分布は現在の1.3%程度から1.5%以上に上方修正されていくでしょう。

利上げの回数が変わらないとすれば、1回当たりの利上げ幅は40bpsになります。しかし、現在のドット分布が1.3%なので、初回利上げがは25~30bpsになるということは、「タカ派が増える来年は、利上げ回数は現在FOMCメンバーが予想している4回より増える可能性が高い」ということになります。

つまり、1回の利上げを30bpsとすると、来年の利上げ回数は5回必要になってくるのです。

5回の利上げとなるとほぼ2ヶ月に1回ですが、FOMCは毎月あるわけではなく、2月5月8月10月は開催されません。

となると、開催される月はほぼ毎回利上げになる可能性も高いのです。

イエレンFRB議長が強調していた緩慢な利上げペースを具現化するために、今月利上げをしたら1月の利上げの可能性は下がるでしょう。しかし、2月はFOMCがないので、来年3月が第2回目利上げです。

その2ヶ月後の5月もFOMCが開催されないので、次は7月、そして、9月、11月、12月とやって初めて5回の利上げが可能になってきます。

現行FOMCメンバーは11月を除いた程度で、来年からのメンバーでは上のような利上げペースになる可能性が高いのです。

そして、利上げ幅は毎回30bps程度。

ドットチャートは3ヶ月に一度出てくるので、今回のFOMCでも出てきます。そのときのドットチャートが上のようになっていたら、初回利上げより「先の利上げペースを見るようになってきたマーケット」はネガティブに捉えるでしょう。

従来から出ていた指標ですが、今までは初回利上げ時期に気を取られみんなが無視していたのです。なぜ、無視していたかというと、それなりに理由はあります。それは、今までは後連れだったからです。

これは2014年3月時点のドットチャートですが、当時は今年末のFFレートを1%程度と見ていました。

今回利上げになっても30bps程度なので、結局、FOMCメンバーで最もハト派的な金融政策になってしまっているのです。これは利上げをするとリーマンショックの再来になってしまうかもしれないとハト派のイエレンFRB議長が過度に恐れたためですが、こういった「過去はFOMCメンバーの見方ほど景気は回復してなかったので、どうせドットチャートも後連れするだろう」と見ていたのです。

しかし、ハト派も納得する労働環境になったことと、来年からタカ派の構成が増えるので、今後も金融政策はドットチャートより後連れするということはないでしょう。むしろ、今年9月のドットチャートより早まる可能性もあるのです。

ということは、次の利上げは来年6月で、その次は来年12月でいずれも20bps程度で、来年末に60bps程度のFFレートだろうと思っているマーケットにとっては、利上げが想像以上に多い、利上げ幅は想像以上に大きい、ドット分布は上方修正されて来年末のFFレートが1.5%になっている……というようなネガティブなことが今後も続くのです。

以上を整理すると以下のようになります。

FRB マーケット
初回利上げ幅 25~30bps 20bps
次回利上げ時期 3月 6月
来年利上げ回数 4回 2回
来年末FFレート 1.3% 0.6%

これに対し私の利上げ予想は以下のように変えます。

初回利上げ幅 25~30bps
次回利上げ時期 3月(8割)、1月(1割)、4月(1割)
来年利上げ回数 5回
来年末FFレート 1.6%

前回見通しより1月利上げの確率を引き上げたのは、このところの要人発言が「早期利上げをしないと、むしろ経済への悪影響が出てくる」という発言が増えているためです。また、来年末のFFレート水準も、先週の1.3~1.5%を引き上げていますが、これも同様の理由です。

ただ、私の見通しでマーケットを予想すると、過度にリスクオフ的なマーケットになってしまうので、明確にリスクオフ入りしない限りはこの見通しを相場予測にはいれず、基本はFOMCとマーケットとの認識ギャップのみを当面の見通しの前提にします。相場が超悲観に傾いたときは下値の目処として私の見方を使用しますが、それまでは市場コンセンサスとFRBの認識ギャップのみを見ているほうが正確な判断が可能と考えています。

今週は歴史的なFOMCがあるので、他のどんなイベントよりFOMCが重要です。当局からの発信材料だけでなく、マーケットが何に関心を持ってきたかも重要になります。

市場が次回利上げ、利上げ幅、来年末のFFレート水準を気にするようになった場合、リスクオフは次のステージに進むので、マーケットが何に関心があるのかについても非常に重要です。

Next: ECB「ドラギ以外は緩和に消極的」/日銀「緩和の可能性わずかに」

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