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FRBの「無慈悲な利上げ」を市場が悟る時、悲劇的なマネー逆流は始まる

リスクオフのシナリオ(3)中国発の新興国ショック再来

次に新興国発のリスクオフシナリオですが、先々週のECBショック以降、ドルインデックスが急落したので、新興国通貨は落ち着いたと思われましたが、実際はドル以上に下落しており、8月水準に急速に近づいています。

トルコに関しては、ロシアからの制裁もあるので、フラジャイル5の中では最も危険です。

通貨が1割減価すれば、借金は1割増えるのですから、米利上げでトルコリラが売られるにつれ、トルコのデフォルトリスクは高まります。しかし、トルコだけでなく、ロシアも他の新興国もみな苦しい状況です。

日米欧の株式市場だけ見ていると気付きませんが、昨年10末の米量的緩和終了以降、エマージング株式市場は低迷したままです。

米国の利上げが始まれば、更に資金は流出するので、株式市場は低迷し通貨は売られ、そして借金はどんどん水ぶくれして危険水域に近づいていくので、来年の早い段階で、どこかの新興国のデフォルト懸念をきっかけにした新興国危機が勃発する可能性がかなり高まったと考えています。

最後は中国経済懸念(中国株だけでなく元切り下げリスクも出てきたのでリスクを中国経済全体にします)ですが、指標となる中国株は買い支えにも関わらずこのところじり安の展開が続いています。

10月以降、政府の元買い介入が起きたときに上海総合指数が強かったので、介入をして売却した資金が株式市場に流入している可能性が高いです。実際、広義のマネーサプライである社会融資総量は、11月に異常な伸びになっています。

それまで10-20%の伸びだったのに突如2倍です。これとていんちき指標なのでしょうが、この指標を強く見せるとIMFなどからインフレリスクを指摘されるので、普通の感覚を持った中央銀行ならば低く見せたいと思うでしょう。

この異常な過剰流動性マネーで持ち堪えていた中国株ですが、今月に入り元の雲行きが怪しくなってきたので、買い支え資金も消えてきたと思われます。元が弱含んできたのは、SDR通貨として採用されたので介入する必要性が無くなったからでしょう。基本は輸出回復のために元を切り下げたいと思っているのですからこれは自然なことですが、その結果、元は8月の強制切り下げショックで売られた水準を上回ってきました。

つまり、私がかねがね指摘している、中国発で新興国ショックがおき、それが世界に波及する形で、先進国もリスクオフになった8月ガラが再現つつあるのです。

となると、中国株も売られやすくなってきました。先週はヘッジファンド関係者の逮捕や、トマムを買収した経営者の拘束など、「都合の悪い人物を片っ端から拘束する」といういかにも共産主義者らしい姑息な手法を取り始めましたが、マーケットはこういう情報を極端に嫌うので、今週の中国株はかなり下げるかもしれません。

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元ヘッジファンドE氏の投資情報』(2015年12月14日号)より
※太字はMONEY VOICE編集部による

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日本株のファンドマネージャーを20年以上、うち8年はヘッジファンドマネージャーをしてきたE氏による「安定して稼ぐコツ」「相場の見方」「銘柄情報」を伝授していきます。

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