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米中貿易戦争は市場に織り込み完了、今年1月以来の買いシグナル点灯で米株は買いか?=江守哲

貿易協議再開への意向を示すものの、本当に実現できるのか…

トランプ大統領は「貿易協議再開へさまざまなレベルで話し合いを続けていく」としていますが、前途多難な状況にあります。選挙対策もあり、どこまで本気でやれるのかは疑問もありますが、このような産業界の声を聴く耳を持っているのかはわかりません

これらの声は、多少は考慮するでしょうが、今回の対中関税のそもそもの問題は「知的財産権」「ハイテク分野」にあります。これらにおける中国の台頭を許すわけにはいかないというのが根幹です。

また、現在の米中貿易戦争は、もはや経済問題ではありません。ある種の国防・軍事問題といってもよいでしょう。このように考えれば、最終的には経済優先のようにみえるトランプ政権が、国防を優先して強硬な姿勢をさらに強めると考えておくほうが無難であるといえます。

つまり、株安になったからといって、安易にそれをゆるめるような発言や政策を打ち出すことに期待しないということです。

市場では「トランププット」なる言葉も聞かれ始めています。これは、過去のFRB議長が、市場の混乱が起きた時に口先介入で市場の下落を止めてくれるという「バーナンキプット」などになぞらえたものです。しかし、トランププットに期待するのは間違いでしょう。

明らかにスタンスが違います。そもそも、立場が違います。トランプ氏は大統領です。FRB議長ではありません。国全体のことを考える立場です。金融市場はその一部でしかありません。

そのトランプ大統領は、ゼネラル・モーターズ(GM)が自身の大統領就任前に中国に主要工場を移管したと批判し、中国で展開する事業を米国に回帰するよう要請しました。

トランプ大統領はツイッターへの投稿で「GMはかつてデトロイトの最大手だったが、今では最小の自動車メーカーの1つだ。GMは私の大統領就任前に中国に主要工場を移管した。これは米国からの救いの手があったにもかかわらず行われた。GMは今再び米国への移管を始めるべきではないのか?」としています。

トランプ大統領の発言は、GMの米国内で働く時間給従業員が4万6,000人と、米自動車大手3社で最小とされるフィアット・クライスラー・オートモービルズ(FCA)の従業員数を下回ったという一部報道に反応したものとみられています。GMは過去40年で米従業員数を大幅に削減しています。1979年には約62万人が勤務していたといいます。確かに、この凋落ぶりはひどいの一言です。

GMは報告書で、「GM中国事業は米雇用への脅威ではない」と説明し、「GM本体が10年以降、中国合弁事業から160億ドルの持分利益を獲得した」と指摘した上で、米事業へは09年以降230億ドルを投じていることを明らかにしています。GMは昨年、中国で360万台を販売し、世界販売数の43%を占めました。昨年の中国事業の持分利益は20億ドルでした。

このように、実際には中国市場にかなり傾斜していることがわかります。しかし、その中国とのビジネスを見直せとのお達しが出ているわけです。これは民間企業への介入であり、あってはならないことではありますが、トランプ大統領にはそれは通用しません。その前提で見ていくことが肝要です。

Next: 米中貿易戦争の中国景気への影響は…?

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