日本の金融の行方
「ものづくり日本」言われてきただけあって、製造業はモノという確固たる生産物を巡って金融に比べればしっかりしたところがある。今の日本で問題になっているのは金融である。平成の時代になって30年、日本国が相対的に弱体化したのは先週号の第3部で述べたように、一つは経済の相対的弱体化である。
第1に挙げられるのは、銀行業の弱体化である。長年にわたってゼロ金利政策がとられ、解消される見通しもない。銀行業というのは言うまでもなく個人部門の余剰貯蓄を安い利子力で集め、法人部門の長期資金を高いリスクで貸す、この利鞘をとるビジネスである。
ところが我が国では1990年後半以降は法人部門の資金不足がなくなり、法人は資金余剰に転じ、利益剰余金の合計がGDPの8割近いところまで及んだ。しかもアメリカでは逆イールド現象といって借り入れるべき短期資金の方が貸し出すべき長期資金よりも利息は高いという現象が起きている。
これでは銀行は損をするだけだ。銀行業の衰弱は資本主義経済の血流が滞ることになるから経済全体を蝕む。それが1990年から2003年まで続いた不良債権山積み時代の日本経済の弱体化であった。今、原因は当時と全く違うが銀行業の弱体化が起こっている。そうすれば経済全体が弱体化する。
次にはアベノミクス創始以来6年9ヶ月、円安政策を貫いてきた。デフレ脱却を名目とする円安誘導は輸出企業に有利に働き、輸出企業はコストダウン努力を蝕んででも結果的には有利になる。短期的には円安は有利になるが、長く続くと良いことではない。
さらなる問題は、日銀とGPIFが日本最大の大株主になってしまったということだ。日銀とGPIFを合わせると上場株式全体の約15%を保有することになる。上場企業の半数は日銀が大株主になってしまっている。
2020年度には日銀がGPIFを上回り、日本最大の株主となる。日本は中国ではあるまいし国営資本主義ではない。ところが結果的にはそのようなイビツな状態になっている。
以上まとめれば、
銀行業の収益構造は悪化する。よって日本経済は滞る。90年から2003年まで通った道である。この期間に日経平均は5分の1になった。
日銀が大株主になるから株は下がらないし、GPIFは買い持ちしたまま売らないから株は下がらない。筆者が多少大袈裟に「国を挙げての株価工作」と言っているのはこれだ。
円安を6年堅持したために輸出企業が有利になった。もし円高が進めば、政権も日銀も動いてくれるだろうという暗黙の期待が経済界に起こってしまっている恐れがある。
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第1部;当面の市況
第2部;トランプ劇場の終焉はいつか? 被追尾国アメリカと追尾国中国の宿命
第3部;中長期の見方
第4部;ふたたび日産西川廣人について──やはり気になる日産のガバナンス意識
第5部;余談─-ラジオ日経のアンケートに答えて
第6部;読者との交信蘭
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※本記事は有料メルマガ『山崎和邦 週報『投機の流儀』』2019年9月22日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はぜひこの機会にバックナンバー含め今月分すべて無料のお試し購読をどうぞ。
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『山崎和邦 週報『投機の流儀』』(2019年9月22日号)より一部抜粋
※太字はMONEY VOICE編集部による
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大学院教授(金融論、日本経済特殊講義)は世を忍ぶ仮の姿。その実態は投資歴54年の現役投資家。前半は野村證券で投資家の資金運用。後半は、自己資金で金融資産を構築。さらに、現在は現役投資家、かつ「研究者」として大学院で講義。2007年7月24日「日本株は大天井」、2009年3月14日「買い方にとっては絶好のバーゲンセールになる」と予言。日経平均株価を18000円でピークと予想し、7000円で買い戻せと、見通すことができた秘密は? その答えは、このメルマガ「投機の流儀」を読めば分かります。