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世界市場は金融緩和頼みだが、天災は忘れられたるころに…まだ誰も暴落を忘れていない=山崎和邦

好機は必ず来る-「天井売らず底買わず」

19年4~6月期の製造業の設備投資は2年ぶりに前年を割れた。前年同期比▲6.9%となった(9月2日、財務省発表)。先々週の株式市場は、日米ともに米中貿易協議の10月開催決定を好感して賑わった。しかし、今後は企業業績の下方修正が相次いで出されるであろう。当然、株式市場を冷やす。長期投資家にとっては絶好の買いは近付いてきたというところかもしれない。

2008年のリーマンショック後はトヨタ自動車が最終赤字に陥ったが、その後1年間で50%以上上昇した。また、15年の本稿で言うところの「壮年期相場」の後の所謂チャイナショックでは三菱商事が最終赤字に陥った。これもその時点で買っておけば1年で50%上昇した。

世界同時減益の中で国際的著名銘柄が大幅減益を来たしたときに、年足で見て、長期の大勢下限銘柄の大底圏内を買って、下がったらナンピン買いすれば概ねは大幅に報いられるものだ。「圏内」で良いと思う。「まさしく大底」は買えない。古来「天井売らず底買わず」と言うではないか。

「天災は忘れられたる頃来る」

標記の文言は、物理学者で漱石門下の文学者でもあった寺田寅彦の言葉であることは御承知と思うが、実は筆者はそれを知らず、高知市内を散策していた日に全く偶然に彼の生家の前を通った時、その旧宅跡に「天災は忘れられたる頃来る」とあった。

漱石の「三四郎」の中に東大の地下室で妙なことを研究している物理の学究のことが出てくる。あれが寺田寅彦だそうだ。そのことは前々から知ってはいたが、標記の文言が寺田寅彦の言葉だということは知らなかった。

そんなことはどうでもいいが、こういうことだ。

天災は稀にしか起こらない。恐ろしさは忘れられた頃、不意打ちを食らわして人命や奪い財産を奪う。こういう歴史は繰り返してきた。

ともすれば過去のことを軽んずる傾向のある現代において、この言葉の持つ警世の意義は特に大きい。

この「天災」を「金融クラッシュ」あるいは「大暴落」と置き換えたらどうだろう。「忘れられたる頃来る」というのだから「忘れられたる頃でなければ来ない」とも読める。だが、これは所謂論理学上の「命題の裏」というもので「必ずしも真ならず」となる。

今、金融不安が来ることは誰も忘れてはいない。「失われた13年」で日経平均が5分の1になったことをほとんどの投資家は身にしているし、その日本経済の大底から小泉政権の時に立ち上がって日経平均が2倍半になった後、またそこから1万8,000円台が半分以下の7,000円になった。

この所謂リーマンショックのことも誰も忘れてはない。したがって「忘れられたる頃来る」というのだから「忘れられていなければ来ない」ということは命題の「裏」となって「必ずしも真ならず」ということになる。

一昨年「適温相場」に甘え、過去を軽視し、教訓を忘れ始めた頃の昨年10月2日から12月25日までの5,500円安がやってきた。

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