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リブラを潰して中国版リブラ発行へ。仮想通貨で世界を牛耳りたい習近平の思惑=矢口新

徐々に力を失っている米ドル

米ドルの流動性が最も高い背景は、以下のように実需に裏付けられているからだ。また、こうした実需は「使い勝手の良さ」に通じるので、テロやギャングの闇市場でも米ドルの人気が一番高くなると言える。

1. 世界最大の経済国、貿易国
2. 世界最大の金融市場(債券市場、株式市場、商品市場、デリバティブ市場)
3. 世界最大のパワー(政治力、軍事力など)

そして、一度確立した「流動性最高」の地位は、その使い勝手の良さゆえに、常に新たな流動性を呼び込むことになる。

その地位が脅かされるのは、上記3点のうち少なくとも1つでも他国が米国を上回った時だけのはずだった。あるいは、米国自らが米ドルの使い勝手を悪くする場合だけだったのだ。

実際に、トランプ大統領による経済制裁や貿易戦争で、米ドルの流動性は徐々に失われてきている。制裁でドル口座を封鎖すれば、ドルを使いたくても使えないからだ。

結果的に、中国とロシアが急接近し、人民元とルーブルによる中露貿易は2013年の7%未満から、2017年には18%以上に拡大した。

また、ロシアの5,000億ドルの外貨準備における米ドルの比率は18年初めの46%から、19年初めには23%に半減した。代わりにユーロの比率を22%から32%へ、中国の人民元を3%から14%に増やし、金や日本円も増やした。

トルコパキスタンなどは人民元建ての貿易に同意した。

ポルトガルはユーロ圏で初となる人民元建て国債を発行した。

日本もまたフィリピンと、円・ペソを直接交換できる市場を創設する予定だ。

仮想通貨「リブラ」は社会的弱者の光になりうる

現在の世界人口は未成年を含めて76億人だが、17億人の成人が金融システムの外にいるという。つまり、預金口座もなければ、ローンを組むこともできない。

既存の通貨・金融システムは、そうしたシステムからこぼれた人たちを見ることはない。

今、世界で映画の興行記録を更新している『ジョーカー』という作品は、そうしたいわば「透明人間」が主人公だ。超要約すれば、社会から無いものとして扱われている主人公が、傍若無人なウォールストリートに勤める若者や、勝ち誇ったテレビのMCを銃殺し、それを「匿名の若者たち」がヒーロー扱いする映画だ。

それが大ヒットしている。17億人の成人が「ジョーカー」を自分たちのヒーローと見ている可能性もあるのだ。

フェイスブックがリブラに託したものは、現実の通貨・金融システムからこぼれた人たちに仮想の通貨・金融システムを提供するものだった。

フェイスブックとて、その人たちに信用供与することはできないだろうが、送金手段なら提供できる。

フェイスブックのユーザー基盤24億人に加え、最大17億人のリブラの潜在的なユーザー、そこにビザやマスターカードといった決済企業の大手が参加すれば、リブラは米ドルに代わる本当の基軸通貨になれる可能性があった

Next: 中国の仮想通貨は「透明人間」を救うか? 有望すぎて潰されたリブラ

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