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日本財政の臨界点。我が国のバランスシートが示す「2020年危機」=吉田繁治

「大きな対外純資産があるから財政破綻しない」という主張は誤り

わが国には大きな対外資産があるから、それを勘定に入れると、政府の財政は破綻しないという説があります。

対外資産は、過去30年の、経常収支の黒字の結果として増えてきたものです。経常収支は「貿易収支+所得収支」です。2011年の東日本大震災から、貿易収支は赤字になっていますが、所得収支の黒字が1年に23兆円(2015年暦年)あるので、経常収支ではまだ黒字です。

経常収支の黒字分は、資本の海外投資になり、投資の結果は対外資産になります。(2015年5月:財務省)

対外資産 対外負債
直接投資:143兆円 直接投資:23兆円
証券投資:466兆円 証券投資:244兆円
外貨準備:151兆円 その他投資:210兆円
その他:183兆円
対外資産:945兆円 対外負債:578兆円
対外純資産:366兆円

平成26年末現在本邦対外資産負債残高の概要 – 財務省

グローバル経済を反映し、対外資産は945兆円に増えています。直接投資(143兆円)は工場や店舗、オフィスです。証券投資は、その60%以上が米国債と米国株です。以上は民間の分です。

この中で政府の分は、外貨準備の151兆円($1=120円付近で時価評価)です。この外貨準備は、一般会計・特別会計の資産として、すでに計上されています。この外貨準備が、政府の資産として、別途あるわけではない。

海外からの負債は576兆円ですから、対外純資産は366兆円です。

対外純資産が、政府の資産としてあるわけではないのです。わが国は、大きな対外純資産があるから、財政は破綻しないという主張は誤りです。

結論:2020年頃の財政破綻は絵空事ではない

政府の債務超過は、

  • 河川、道路、不動産等の換金性のない資産を入れたとき490兆円
  • 換金性のない資産を除いたときは708.5兆円

です(2013年3月期)。

債務超過額は、2000年代の傾向では、年間で25.9兆円増えています。ほぼ財政赤字分増えるので、今後も年間で30兆円は増え続けると想定しておかねばなりません。

最も金額と増え方が大きいのが社会保障費の116.8兆円です。この中で51.8兆円(44%)は、政府(中央政府+地方自治体)が、一般会計から補填しています。社会保障費の増加額は、抑制されても1年に3.5兆円はあります。

以上は、国債リスクが増して金利が上がり、国債の発行が困難になった結果である財政破綻に向かって突き進んでいることを示します。

なお対外資産(純資産で366兆円)は、民間の資産なので、これがあるから財政が破綻しないとは言えません。政府の対外資産である外貨準備は、政府のB/Sの資産にあらかじめ含まれています。

将来の破綻を防ぐ対策は、単純です。3つしかない。

  1. 財政支出の削減
  2. 増税
  3. 政府の債務比率(政府債務/名目GDP)が大きくならないように、名目GDPを年率3%以上で増加させる

現在、名目GDPの増加はほぼ0%です。(1)(2)(3)のそれぞれの可能性を検討し、その実現が想定できないときは、2018年(早ければ2017年)ころから債券市場の金利が上がり、2020年頃の財政破綻となるでしょう。

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ビジネス知識源:経営の成功原理と実践原則』(2015年12月7,14日号)より一部抜粋、再構成
※太字はMONEY VOICE編集部による

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