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日本財政の臨界点。我が国のバランスシートが示す「2020年危機」=吉田繁治

政府資産の中身を正しく理解する(2)

【運用預託金:104.8兆円】

運用預託金は、公的年金(厚生年金、国民年金)の掛け金が政府に預けられたもの(国民の年金基金)を、GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)が預かって、内外の国債、内外の株、内外の債券で運用しているものです。年金積立金管理運用独立行政法人というような長い名前をつけるのが、行政の特徴ですね。

2015年の7月末(第1四半期)では以下の構成です。年金基金の運用総資産141兆円のうち、

・国債:53.5兆円(38.0%)
・国内株:33.0兆円(23.4%)
・外国債券:18.5兆円(13.1%)
・外国株:31.4兆円(22.3%)
・短期資産:4.7兆円 (3.3%)

2014年以前は、年金では長期で安全な運用が必要として、国債が65%でした。2014年11月からは、株を上げるという政府の意向を受け、国内株25%、海外株25%の運用枠に変更しています。

50%をリスク資産での運用に変えたのです。日本と米国の株価が上がるときはいい。問題は下がったときです。現在は平均すれば年間で20%の幅(VI:ボラティリティインデックス)で株価は上下しています。

このVIは1年間で現在の株価(1万9230円:12月11日)が、2万3000円へと20%上がる確率と、1万5380円へと20%下がる確率が50:50ということを意味しています。1万5000円付近に下がれば、大きな政治的問題になります。

2015年9月期には、中国株ショックからの下落で7兆円の運用損を出したと話題になりました。今後、大きな損を出すと、世論から、厚労省が「またやった」と非難されるでしょう。

GPIFの運用額は、国内株でも33兆円(15年6月末)と巨大なので、買ったものを売ることはできません。GPIFが損切りで売りに出たとすれば、株価は一層下がるからです。

「中長期(向こう3年)」で問題になるのは確実です。下がったら、どうするのでしょうか。安倍内閣の失政になることも、50%の確率で想定できます。

【出資金:66.3兆円】

高速道路保有・債務返済機構(6.6兆円)、日本郵政株式会社(4.5兆円)、日本政策金融公庫(3兆円)、国際協力銀行(2.3兆円)、政策投資銀行(2.5兆円)、日本たばこ(2兆円)、日本電信電話(1.8兆円)、その他空港、道路等、約30の独立行政法人、国立大学、政府系研究センター(100ヶ所くらい)への出資です。

これらはほぼ全部が「天下り先」です。政府が出資する必要があるのかどうか疑問です。日本タバコなどなぜ出資するのでしょうか。小保方さんの理科学研究所も混じっています。ただし、政府資産としては、勘定できるでしょう。

【固定資産177.7兆円】

固定資産は、まず国有財産が27.7兆円です。これは、土地11.9兆円、建物3.1兆円、工作物(橋など)が2.9兆円です。他に山林7兆円、船舶(自衛隊など)があります。

次は普通財産5.0兆円に分類されている土地4.3兆円や建物と工作物0.7兆円です。

更に公共用地38兆円と分類されるものがあります。河川の治水18.1兆円、道路19.7兆円、港湾、漁港などです。

加えて公共財産施設が106兆円です。内訳は海岸2.6兆円、土地改良4.9兆円、河川の治水47.5兆円、道路45.7兆円などがあります。

以上の合計が177.7兆円です。公共投資のカタマリが、政府の固定資産です。

Next: 換金性のある資産は、652.7兆円のうち37%の242.9兆円しかない

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