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日本財政の臨界点。我が国のバランスシートが示す「2020年危機」=吉田繁治

「日本政府の信用」という要素を加味して考えると?

理由は、将来の収入(税収)や増税ができるという信用を政府がもっているとみなされているからです。国債の信用は、それを買う側が認定します。社債の信用を買う金融機関が決定することと同じです。この信用を金額にして入れると、以下のような想定バランスシートになるでしょう。

【信用という資産を入れた、政府のB/S】

資産合計:249.2兆円 負債合計:957.7兆円
将来の税収という信用:708.5兆円 債務超過:0

将来の税収が、債務超過を減らし、最終的にはなくしていくという想定信用を、資産としていれたものです。

個人になぞらえると、この意味は分かるでしょう。換金性の資産がゼロで、500万円の借り入れできたとします。債務超過が500万円です。これでも借り入れができたのは、貸した銀行が、将来の所得を予想し、(所得-消費=貯蓄)から返済ができると見ているからです。上のB/Sは、これと同じ考え方です。

【債務超過額は年々、大きくなる】

ただし問題になるのは、この債務超過額が年々大きくなることです。毎年の財政赤字のため、1年平均で23.9兆円は増えて行きます。ここをどう考えるか。

2017年4月からの消費税の増税(8%→10%)が、食品の軽減税をめぐって政治問題になっています。消費税1%は、2.5兆円の税収に相当します。2%で5兆円です。

この消費税を、ほぼ20%に上げることができ、政府支出が同じならなら、単純計算では、税収は25兆円増え、政府財政はバランスします。単純計算とは、増税によるGDPの低下を考慮に入れないものです。

ただし実際は、2015年現在で125兆円の、政府の消費的支出が年間で数兆円は増えているので、25%から30%の消費税になります。

【要点:日本は消費税25~30%に?】

国債を買う金融市場は、時期は不明でも将来は、日本は消費税25~30%になりえると見ているのでしょう。可能性がないなら、すでに国債は不良な債券です。現実は、不良な債券ではない。背理法ですが、健全債券とみなされるのは、将来の増税が期待されているからです。

5.社会保障の総体:政府=(一般会計+特別会計)

1年30兆円から40兆円の赤字を続ける財政の中で、最も大きく、しかも増えている社会保障費の内容を見て、今後どうなるかを考えます

年金と医療費が大きくなった政府の財政支出の減額は、実行されても、可能な額がとても小さいのです。最大限の可能性も、増えるのを止めるくらいです。社会保障費(116.8兆円)の支出と、その財源は以下です(2015年度)。

【政府、つまり、一般会計と特別会計を合算した社会保障支出】

支出 財源
年金:56.2兆円 保険料:64.8兆円
医療費:37.5兆円 政府負担:31.8兆円
介護費:9.7兆円 自治体負担:12.8兆円
その他福祉:13.4兆円 政府の資産収入:7.3兆円
支出合計:116.8兆円 財源合計:116.8兆円

社会保障費のうち保険料でまかなわれているのは、支出総額(116.8兆円:GDPの23%)のうち、55%です。45%にあたる52兆円です。

社会保険料(年金や医療費の掛け金)で足りない分は、政府負担31.8兆円、自治体負担12.8兆円、政府の資産収入からの補填7.3兆円、合計で51.9兆円の、政府部門の負担になっています。

それにしても、GDP(国民所得)が変わらない中で、年金、医療、介護を中心とする社会保障費は大きくなっていますね。数年前に100兆円を超えたと言っていましたが、今は116.8兆円です。2000年には78兆円でした。1年に2.8兆円(約3兆円:ほぼ3%)増えてきたのです。
日本の財政関係資料[PDF]社会保障給付費の推移[PDF]

【年金】

公的年金(国民年金、厚生年金)の加入者は6718万人(国民の53%)です。受給者は、3950万人に増えています。

国民のうち31%(3人に1人)が、2014年で年金受給者になっています(2014年3月)。1人当たり平均で142万円(月間12万円)です。夫婦2人なら20万円程度です。

【医療費】

医療費では、70%を占める健保・国保からの公的支出分が37.5兆円です。別に、個人負担が約30%あります(75歳以上は10%)。

公的支出分の、1人当たり医療費は年間30万円(月間2万5000円)です。家族3人なら、7万5000円/月ですから、大きな支出です。

なおこの37.5兆円は、わが国の全世帯の食料支出(月間7万円)とほぼ同額です。
(注)食料と医療産業は、同じ規模になっています。

9.7兆円に増えた介護費は増加率がもっとも高く、年率17%増(1.6兆円)です。10年後の2025年には、21兆円になるという(厚労省の想定)。商品産業は伸びませんが、介護事業だけは大きく増えます。

75歳以上の人口が現在の1645万人から533万人(32%)も増えて、2178万人になるからです。逆に、20歳未満は、2176万人から1849万人へと15%減ります。
介護給付と保険料の推移[PDF]

(1)公的年金(56.7兆円)、(2)医療費(37.5兆円)、(3)介護費(9.7兆円)を3大支出とする社会保障費は、116.8兆円です。

【不足分】

年金や医療費などの社会保険料からまかなえている分は、64.8兆円(総支出の56%)です。

足りない52兆円分を、

  1. 中央政府が31.8兆円
  2. 自治体が12.8兆円

税収と公債の発行で補っています。

不足分は、支出を抑えても約3兆円/年(約6%)は増えていきます。

社会保障費(116.8兆円)の削減は、政治的にも、シビルミニマム(国民の最低限の生活基準)の観点からも難しい。手をつけても、毎年の増加(3兆円)を抑制することしかできないでしょう。

Next: 「対外純資産があるから財政破綻しない」は誤り/2020年危機

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