経済不振で出生率低下に
すでに、韓国経済はふらついている。
今年の成長率は、2%割れが濃厚だ。昨年が2.7%成長であるから、その落差は大きくなる。これが、韓国企業の先行き不安を高める。設備投資を控えるので、GDPはさらに落ち込むという悪循環にはまり込むだろう。
韓国が、日本の半導体3素材の輸出手続き規制撤廃を求めて必死である。12月末に予定されている日韓首脳会談で、日本から前向きの「回答」を引き出すべく、徴用工賠償金問題で新たな法案を準備中である。これは、韓国の文国会議長提案による「基金案」である。日韓の企業・個人による寄付金で賠償を払うという「代位弁済」方式(第三者が代わって弁済)が有力になっている。文議長は、12月中旬までに成案を得たいとしており、与野党が協力する姿勢を見せている。
文議長が、この「基金構想」を発表したのは、11月5日の早稲田大学講演会の席だ。あれから1ヶ月余で成案にまとめようというのは、韓国経済の深刻さを物語っている。韓国経済を覆う不透明感を一掃しようという狙いであるからだ。
韓国経済の不透明感が、少しでも薄らいでくれば、企業は設備投資を行なう気運になろう。それは、雇用増加に結びつき失業率を低下させる。
こういう好循環を描ければ、出生率回復期待がかかるかも知れない。だが、そう言い切れないところに韓国の抱える悩みの深さがある。
最低賃金「大幅引き上げ」が韓国経済を突き落とした
最低賃金の大幅引き上げが、2018~19年の2年間で約29%も行なわれたことだ。
これが、韓国の雇用構造を破壊した。とりわけ、自営業が最低賃金の大幅引き上げと週52時間労働制の実施で、相次いで破綻に追い込まれている。韓国の自営業比率は全雇用の約25%も占めている。日本の約10%に比べて特段の高さだ。
こういう高い韓国の自営業比率では、2年間で約3割もの賃上げを実現できるはずがない。賃金は、生産性上昇に見合わない限り、安定的に支払えないからだ。こういう、経済原則を無視する経済政策が、韓国の自営業を塗炭の苦しみに追い込んでいる。
自営業だけではない。中小・零細企業も同様の苦しみである。
経済不振がさらに出生率低下に拍車をかける
経済の破綻は、合計特殊出生率を引き下げた。次に、2010年以降の合計特殊出生率の推移を示した。
<韓国の合計特殊出生率推移>
2010年:1.23
2011年:1.24
2012年:1.30
2013年:1.19
2014年:1.21
2015年:1.24
2016年:1.17
2017年:1.05
2018年:0.98
2019年:0.88以下(予想)
2017年以降の合計特殊出生率は、それ以前と著しい変化が見られる。
2017年の合計特殊出生率は、1.05である。この時、すでに「変調」が見られる。これは、2016年10月から朴槿惠大統領の弾劾裁判の動きが始まっており、国民は先行きに不安を覚え、「出産抑制」に動いたと見られる。