文政権の間は出生率が減り続ける
韓国では、国民が政治不安に対して敏感である。消費者不安心理が高まって、個人消費抑制行動を取るのがパターンだ。
この不安心理は当然、出産意思にも影響するであろう。
韓国は、歴史的に中国の支配を受けて来た。これが、政治不安に敏感に対応する心理構造を生み出した要因と見られる。
朴大統領を弾劾することが、国民の4割を占める保守派の人々を不安にさせたのは当然。この影響がまず、2017年の合計特殊出生率の低下に現れた。そして、2018年以降は、本格的な文政権による「経済政策失敗」が拍車をかける結果になった。
これが、私の読みである。文政権が続く2021年までの合計特殊出生率は、「下り坂」一方と見るほかない。
その原因は、自営業破綻による雇用構造の破壊と失業率増加である。この2つの要因で、合計特殊出生率の急低下はほぼ説明可能であろう。
公務員家庭2倍の新生児
韓国の中には、以上のような低位な合計特殊出生率と「別世界」が存在する。公務員家庭である。ここでは、失業の心配はない。確実に昇給する。有休休暇も保障されている。サラリーマンの天国である。
<人口1000人当りの新生児数(2016年)>
国民 :14.5人
中央政府公務員 :32.7人
地方自治体公務員:30.7人
(資料:『朝鮮日報』2018年9月16日付)
公務員家庭の新生児数は、一般家庭の2倍以上である。
これが意味するのは、韓国社会全体が、公務員家庭と同じような生活環境を整備すれば、出生率が上がる可能性を示唆している。これは、誰でも気付くことだ。
「経済知識ゼロ」だった文政権
文政権は、手法を取り違えてしまった。民間企業では、生産性向上が賃上げの前提である。「生産性上昇>賃上げ率」が方程式である。文政権は、これが、「生産性上昇<賃上げ率」という真逆へ落ち込んだ。
かくして、韓国経済「沈没」のトリガーを引く不名誉な結果になった。
文政権は、生産性上昇と賃上げ率の基本的な関係を見落としていた。経済についての知識がゼロであったことを示している。韓国大統領府と与党「共に民主党」で、この間違った賃上げを指摘する者が一人もいなかったのだ。
その点が、悲劇的ですらある。誰も、経済の基本を理解していなかったのは、韓国の未来がきわめて暗いことを示唆している。