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相場はダマし合いの世界?「大言壮語」からは遠ざかり、指標に日々触れるのを怠らない=櫻井英明

NYでは、決算資料として多くの企業がnon-GAAPを採用しているが、日本では採用されていないと米系企業のトップに指摘された。今後は日本でも採用されるのか。(『「兜町カタリスト」』櫻井英明)

補完データであるはずのnon-GAAPが注目される米株市場

米企業の決算補完資料non-GAAPは、会計データの利益を上回る傾向

「相場は推理推論の世界」と聞くと、何となく理解できたような気になる。しかし、ことはさほど簡単ではない。まず推論は演繹とも言われる。「~である」という結論が必要だ。

演繹とは、ある抽象的な事柄から具体的な事柄を推論すること。推理は帰納とも言われる。「~だろう」「~かもしれない」という結論が必要になる。帰納とは、ある具体的な複数の事柄からそれらに共通する抽象的な事柄を推論することだ。

しかし、相場は「兵は詭道なり(孫子)」の世界。

「兵」は戦争、「詭道」は人を偽り欺くこと。「戦争は騙し合いである」という意味だ。相場にも買い手と売り手という敵がいる。いずれも勝つためには可能な限りの手を使ってくる。騙す側が悪いのは」当然だ。しかし騙されることはさらに悪い。

「避けるためには敵の手のうちを理解することも必要だ」とされる。それでもこれらを含めて相場格言でさえも「頭でわかっても体でわからない」のが相場。

「悪材料の出尽くし」「人気先走り」「知ったら終い」「アク抜け」「材料はあとから出る」「煮え詰まれば動機づく」「上り坂の悪材料は買い、下り坂の好材料は売り」。間違いなく正しいと理解はできるが、そういう場面に遭遇した時に思い浮かぶかどうかは微妙。「心動けば相場に曲がる」と分かっていても実践は難しい。

時間の経過とともに結論は出る。しかし、その時間の渦中に参加者全員がいるだけに心は大きく動くものだ。そういう意味で相場には謙虚に対峙することが必要だろう。一番避けるべきは「大言壮語」からは遠ざかること。「私の言ったことを聞いておけば…」なんて論外でそれは結果論。「私失敗しないから」という言葉が該当する世界はもちろんある。

しかし市場ではあり得ない世界だ。もっともあれこれと材料を羅列したうえで「可能性20%、50%、30%」。これも小ズルく見えて仕方がないが…。指標や紙芝居に日々触れることだけは怠らないというのが一番良い方法だろう。

ある米系企業のトップに指摘されたのはGAAPとnon-GAAPの問題。

NYでは多くの企業がnon-GAAPを採用しているが日本ではほとんど考慮されていない現実はおかしいというのが趣旨だ。GAAPは一般に公正妥当と認められる会計原則のこと。

ただ汎用性が高い反面、必ずしも個社の事業の特性を的確に表しているとは限らない。
そこで自社の事業の実態を投資家等に適正に理解してもらうためにnon-GAAPを決算説明会などで使用するという。

non-GAAP情報として有名なものはEBITDA(減価償却前利益)だ。将来への投資と現在の収益を区分。収益の成長性を示す等の目的でEBITDAを重視するという。減損等特殊要因による損益を控除した「調整後利益」等のnon-GAAP利益を公表することも多いという。

公表されるnon-GAAP情報は会計ルールに基づく利益を上回る傾向が見られるというのが事実。「会社の真の収益力」を表す指標、どちらなのかというのは真剣に考える時期がやってきたということ。アメリカの企業がアメリカの会計基準から離れてきているのなら同調する動きが出てきてもおかしくはない。

Next: アメリカ株高の原因の一つが会計基準の見せ方にある可能性も?

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