ハイイールド債の危機
そこで金利が上昇すると、真っ先に売られるのは、リスクの大きいハイイールド債(特にジャンク・ボンド)です。
これまで少しでも高い金利を求める投資家が、あえてリスクに目をつぶってハイリスクのハイイールド債を購入して、その価格が信用力以上に吊り上がって((金利は下がって)いました。信用不安が出れば、真っ先にこれらの債券が売られます。
その点、サウジとロシアの原油価格戦争に巻き込まれた米国のシェール企業が打撃を受け、収益の悪化に直面しています。シェール企業が発行するジャンクボンドは、原油価格急落で、その返済不安が高まり、デフォルト・リスクが意識されるようになりました。
これが同様にリスクの高い証券、CLO市場からの資金逆流を呼ぶ可能性があります。
米国では本来投資不適格とみられる低格付け企業向けの貸出(レバレッジド・ローン)が急増し、これを証券化したローン担保証券であるCLOの残高が6,000億ドルを超えて急増しています。
日本の機関投資家の中にも、これを多く保有するところがあります。
これらは企業の返済が不安視されると、債券が売られやすくなり、信用不安に弱い商品です。ジャンクボンドが売られると、それがCLOからの資金逆流、相場の急落を引き起こし、挙句の果てに金融債務危機のトリガーとなって第2のサブプライム危機を誘発するリスクを秘めています。
米国市場がコロナウイルスの感染不安でこれまでになく不安定になっているだけに、ちょっとした要因で金利が大きく動く可能性があり、それだけ投資家がナーバスになっています。
財政拡大策は景気浮揚に必要ではありますが、これが金利を大きく動かすようだと、債券市場でのリスク商品が相場の急落を見せ、金融市場全体を不安に陥れる懸念があります。
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- 金融政策行き詰まりの危険な帰結(3/18)
- 金融政策行き詰まりの危険な帰結(3/16)
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『マンさんの経済あらかると』(2020年3月18日号)より一部抜粋
※タイトル・見出しはMONEY VOICE編集部による
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金融・為替市場で40年近いエコノミスト経歴を持つ著者が、日々経済問題と取り組んでいる方々のために、ホットな話題を「あらかると」の形でとりあげます。新聞やTVが取り上げない裏話にもご期待ください。