「WTI原油先物価格が史上初のマイナスになった」と世界のメディアが一斉に報じています。でも、ガソリン価格はそこまで安くなりません。理由や影響を解説します。(『高梨彰『しん・古今東西』高梨彰)
※本記事は有料メルマガ『高梨彰『しん・古今東西』』2020年4月21日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はぜひこの機会にバックナンバー含め今月分すべて無料のお試し購読をどうぞ。
日本証券アナリスト協会検定会員。埼玉県立浦和高校・慶応義塾大学経済学部卒業。証券・銀行にて、米国債をはじめ債券・為替トレーディングに従事。投資顧問会社では、ファンドマネージャーとして外債を中心に年金・投信運用を担当。現在は大手銀行グループにて、チーフストラテジスト、ALMにおける経済・金融市場見通し並びに運用戦略立案を担当。講演・セミナー講師多数。
WTI原油先物価格「マイナス」でも、ガソリンは無料にならない
「WTI原油先物価格がマイナスになりました」と、世界のメディアが一斉に報じています。
最初にハッキリとひとつ。「街のガソリン価格、マイナスにはなりません。タダ同然にもなりません」。
これ、誰もが思い浮かべる、素朴だけどもっとも重要な疑問です。
というところで、今回は「原油先物」という商品先物取引について、ひとつふたつ解説します。
先物とは?
先ず「先物」とは何ぞやです。金融関係の言葉の多くは英語からの訳語です。そのためピンと来ない表現も多く、「先物」もそのひとつ。
「先物」は英語でfutures、未来・将来です。「先物取引」は「将来の取引を今決める」、そんな意味になります。
マイナスとなった原油先物、具体的には「原油先物5月限(ごがつぎり)」です。この「5月限」も英語にしますとMay contract(メイ・コントラクト)、「5月の契約」となります。
もっと具体的には「5月1日から5月31日までに、原油の受け渡しをする際の価格を契約する」です。
原油は毎日必要です。そのため先物取引も5月限だけでなく、1月・2月・3月と毎月の限月(げんげつ)、受け渡し契約を行う取引が存在します。
ちなみに、先物取引では、限月がたくさんあっても取引数ばかり多くなってしまうため、「主な取引限月」というものも存在します。多くは3月・6月・9月・12月の限月(契約)です。
原油先物でも翌月分6月限の方が取引の厚みがあります。売り手と買い手の数も多く、取引も6月限の方が5月限よりもスムーズに行えます。