WTI原油とは?
次に「WTI原油とは何ぞや」です。
WTIはWest Texas Intermediateの略です。でもって、WTIはWTとIに分かれます。WTは「ウェスト・テキサス」、「テキサスの西の方」、米国南部にあるテキサス州やニューメキシコ州周辺を指します。Iの「インターミディエイト」は原油の種類、と言ってもまったく詳しくないんですけど、「低硫黄の軽質原油」らしいです。
大雑把に言えば、「テキサス周辺の原油」です。この原油を将来売ったり買ったりする価格が「WTI原油先物価格」です。
また、先物取引にはちゃんとした定義があります。件のWTI原油先物の場合は、テキサス州の北、オクラホマ州クッシング(Cushing:カッシングとも表記します)という場所で原油の受け渡しを実際に行う取引、そういう定義があります。
「WTI原油先物5月限」ならば、「5月1日から5月31日までに、オクラホマ州クッシングにて原油の受け渡しを行う際に適用される価格の取引」となります。
また先物取引には、最終取引日があって、今回のWTI原油先物5月限は本日4月21日です。昨日、価格がマイナスになったのも、「明日で取引が終わっちゃう。どーしよ、投げ売りしなきゃ」
が主な理由です。
なぜ急落?
でも、20ドルから一気にマイナス40ドルまで下落する必要もなかったはずです。
昨日の終値は-37.63ドル、安値は-40.32ドルでした。「原油を買っておカネを貰おう」のノリです。
そこには今まで書いたような、「明日で取引が終わり」「5月限はそもそも取引量が少なく、売りたくても買いで応じる人が居ない」、これらが主な要因となっています。
加えて、先物の根っこともいえる「現物(ここでは原油)の受け渡し」ができない人も取引に加わっている、これも大きな理由かと思われます。
WTI原油先物を買ったまま本日が終わるまで放置するとどうなるでしょうか、例えば昨日の引値-37.63ドルで1枚(1つの契約)買うと、「1バレル(≒159リットル)-37.63ドルで、1,000バレル『必ず』買って下さい」となります。
WTI原油先物の最小取引単位は1,000バレルなのです。ということは、1,000バレルの原油を蓄える場所が必要となります。パイプラインや船といった輸送手段も必要です。
石油業者であれば問題はありません。しかし、金融先物取引は石油業界以外の人も多く取引します。私だって契約さえ結べば可能です。と言いますか、他の先物同様、金融取引として原油先物を扱う人がほとんど、石油タンクなんて持っていません。
またETFも含めた投資信託でも「原油ファンド」は存在します。「原油価格が上がると、ファンドの価格も上昇します」ってやつです。この手のファンドの多くは原油先物を買います。
一方、先物には期限、最終取引日があります。原油ファンドを続けるには、例えば5月限が終わる本日までに「5月限を売って、6月限を買う」という取引をしなければなりません。そうしないと原油が手元に入ってきてしまいます。
昨日の急落には、この手の取引も多少あったのではないでしょうか。
そこで、次の限月、6月限をみますと、直近の値は21ドル台です。ついでに2020年12月限は32ドル台、現在最も将来…、先の限月である2031年2月限は54ドル台となっています。2031年の限月はともかく、2020年12月限の価格をみますと、「年後半には原油価格も、世の中の景気も少しは良くなるのでは」といった思惑が価格に反映されています。