コロナ最優先、財政赤字の議論は吹き飛んだ
そしてこの議論の分かれたMMTを自然に受け入れさせたのが、今回の新型コロナです。
この春、世界の主要国で大恐慌以来と言われる大幅なマイナス成長を記録し、世界で3千万人以上が感染し、死者が100万人を超えても、なお感染の収束が見えません。
各国ともにコロナ対応が最優先される中で、財政赤字の議論は吹き飛び、疑似MMTが正当化されるようになりました。
ただ、MMTと異なるのは、中央銀行が紙幣を刷って国債という借金を消しているわけではなく、政府が大きな公的債務を抱え、一方で中央銀行が巨大な国債を保有している形でバランスしています。
ですから政府と中央銀行のバランスシートを合体させ、統合すれば債権債務が相殺されるのですが、単体としてはそれぞれが大きな債務と資産を抱えた形になります。
コロナバブルは無傷で着地できるのか?
また、中銀が財政赤字分を紙幣増刷してばらまいているわけではなく、中銀は民間銀行から国債を買い、その代金のほとんどは民間銀行が中銀に持っている当座預金に振り込まれます。
つまり、中銀が国債を購入した代金は市場に出ずに、中銀の当座勘定にとどまっているので、モノやサービスに対して貨幣が過剰になり、インフレになるというリスクは小さくなっています。
それでも財政と金融が協力して流動性を大量に供給している点を市場が評価して、各国の株価を押し上げ、「コロナバブル」と言われるほど、株高をもたらしました。
問題は、純粋MMTと違って政府の債務はいずれも拡大していて、中央銀行の保有資産も異例の拡大をしています。これが相殺されない限り、それぞれに将来これを減らす「出口策」が意識されます。
それをどうさばくかが、財政金融当局に課せられた大きな宿題となります。市場に混乱を与えないように、矛を収めなければなりません。
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『マンさんの経済あらかると』(2020年9月23日号)より一部抜粋
※タイトル・見出しはMONEY VOICE編集部による
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金融・為替市場で40年近いエコノミスト経歴を持つ著者が、日々経済問題と取り組んでいる方々のために、ホットな話題を「あらかると」の形でとりあげます。新聞やTVが取り上げない裏話にもご期待ください。