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日本も実験場。コロナ口実の疑似MMT、巨額財政支出にリスクはないのか?=斎藤満

中銀が債券買い入れで支援

注目したいのは、こうした財政支援を中央銀行関係者が口にするようになったことです。

従来、中央銀行は財政とは一線を画し、財政政策には口を挟まないようにしていました。日銀は今でもこれを通しています。しかし、米国ではこれまでグリーンスパン議長(当時)以外は口を閉ざしていた財政問題に、FRB幹部が積極的に発言するようになりました。

パウエル議長のみならず、地区連銀総裁や理事までもが財政によるコロナ対策の必要性を訴えています。

そして何より、中央銀行がこぞって国債など債券の買い入れで財政政策を側面支援しています。FRBや日銀はいずれも「必要なら無制限の買い入れも」と言っています。日銀はこれまでこっそりと国債の買い入れ規模を落としてきましたが、今後も国債の増発が進み、長期金利に上昇の動きが見えれば、機動的に国債買い入れ額を増やす意向のようです。

FRBもジャンクボンドの買い入れまでしているわけで、信用格付けの低い社債を買うくらいなら、国債の買い入れを増やすほうが無難です。ここまでは月々の買い入れ額を定めていますが、今後これを増額したり、上限を外してくる可能性もあります。

ECBもコロナ支援策として発行された共同債を購入することで、資産買い入れがこれまでよりも容易になります。これまではドイツ国債が少なく、買い入れの上限にヒットしてしまい、ルールを変えろとの議論もありました。共同債の買い入れによって、流動性の供給余地が高まります。

事実上のMMT

このように、日米欧がこぞって中央銀行の支援の下で積極的に財政赤字を拡大しています。これは昨年大きな議論を呼んだ「MMT(現代金融理論)」を事実上、実験的に始めたようにも見えます。

MMTは米国のステファニー・ケルトン教授らが提唱し、米国の民主党がこれをもとに財政拡張主義を唱えた経緯があります。

この考えでは、「自国通貨を発行できる中央銀行を持つ国は、財政赤字を気にせずにどんどん国債を発行して景気対策に使うことができる。中央銀行が通貨を刷ればよいので、政府は財政赤字を心配しなくてよい」というものです。

厳密にいえば現在主要国がやっていることはこのMMTとは異なりますが、中央銀行が支援して政府が財政赤字を拡大する形は、事実上のMMTに近いものです。中央銀行が刷った紙幣を直接政府が使うわけではありませんが、政府が発行した国債を中央銀行が買い取り、資金を供給しているので「疑似MMT」といえます。

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