ホンダはきっと救済する
それだけ業界でのプレゼンスがある会社ですから、仮に多額のリコール費用を負担することになっても完全に倒産することはなく、事業は何らかの形で継続するでしょう。そうしないと多くの自動車メーカーが困ってしまいます。
タカタの事業そのものは悪化していないので、資本注入さえできれば困難を乗り越えることができるでしょう。資本注入の主体として真っ先に名前が上がるのがホンダです。しかし、ホンダの八郷社長は2月の会見で以下のように発言しています。
独自でタカタの経営支援は考えていない
突き放したようにも見える発言ですが、これは他の自動車メーカーに対するけん制だと考えています。タカタが潰れて困るのはホンダだけではないので、自社だけでなく他社にも協力して欲しいというのが本音でしょう。
ホンダにとって一番困るのが、タカタが会社更生法を適用し、リコール費用の負担を減額してしまうことです。もしそうなった場合、ホンダをはじめとする自動車メーカーはタカタが払えなかったリコール費用を負担せざるを得なくなります。合理的に考えれば、タカタが会社更生法を申請する前に資本注入により救済して、リコール費用をしっかり払ってもらった方が”得”なのです。
以上の理由から、私は最終的にホンダがタカタを救済し、上場廃止は免れる可能性が高いと考えます。しかし、救済されるから株価が上がるかというと、そうもいきそうにありません。
株価上昇を妨げる「希薄化」
資本注入されたとして、その金額は数千億円単位になると考えられます。タカタの現在の時価総額は300億円そこそこですから、資本注入時に株式数が10倍前後にまで増える「希薄化」が起きてしまうのです。
仮に3,000億円の資本注入があった場合、株式数は8,300万株から8億6,000万株まで急増します(本日4/12の終値386円で算出)。株式数が増えるということは、1株あたりの価値が薄まるということです。
リコール問題を脱した後のタカタの本質的な価値が時価総額2,000億円だったとしても、株式数増加後の適正株価は233円ということになります。なお、事故発覚前である2年前の時価総額は1,600億円程度なので、2,000億円でも甘めの見積もりです。
上場廃止リスクに加えて、それを逃れたとしても希薄化が必至であり、株価は上昇しにくい状況が続きそうです。
『バリュー株投資家の見方|つばめ投資顧問』(2016年4月12日号)より一部抜粋
※太字はMONEY VOICE編集部による
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【毎日少し賢くなる投資情報】長期投資の王道であるバリュー株投資家の視点から、ニュースの解説や銘柄分析、投資情報を発信します。<筆者紹介>栫井駿介(かこいしゅんすけ)。東京大学経済学部卒業、海外MBA修了。大手証券会社に勤務した後、つばめ投資顧問を設立。