2021年の傾向と予測
このようなリップスティッチ教授の予測を見ると、感染力は強まっているものの、弱毒化して致死率が急速に低下しているいまの状況は、教授の予測と一致しているように思える。すると、2021年の状況と傾向は次のようになる可能性が高いのではないだろうか?
・流行性感冒化し、感染拡大の波を繰り返す
・世界人口の40%から70%が感染
・弱毒化し、1%程度かそれ以下の致死率で安定
・世界の地域によっては断続的なロックダウン
これを見ると、要するに新型コロナウイルスはインフルエンザに近くなり、さほど怖いものではなくなるということだ。もちろんインフルエンザの数倍の致死率なので、感染しないように厳重に注意しなければならない。
だが来年には、マスクを着用して、適切なソーシャルディスタンスを取り、手洗いとうがいを徹底すれば経済活動を再開しても大丈夫な水準になる。
また、ワクチン接種の最大の効果は重症化の予防である。すでに「ファイザー」や「モデルナ」、そして「アストラゼネカ」のワクチンではその効果が確認されている。すると、ワクチンの接種が拡大する来年の4月から5月頃には致死率はさらに低下し、落ち着いた状態になるのではないだろうか?
新種の変異型
だが、致死率が低く怖いものではなくなるといっても、強い感染力は維持される可能性が高いので注意しなけれなならない。第611回の記事で詳しく書いたが、9月の時点で新型コロナウイルスの危険な変異型が発見されている。
それらは、次のようなものだ。
・V483A変異型
アメリカでは、今年の5月の時点では感染者の0.1%程度にしか検出されなかったが、9月には3.7%がこの変異型に感染している。このペースで拡大すると、12月には50%の感染者が、この抗体に耐性を持つ変異型に感染していてもおかしくない状況だとしている。拡大が予想される地域は、アメリカ中西部と北東部になると予測されている。
・A475V変異型
これも抗体に耐性を持つ変異型のウイルスである。5月の段階ではイギリスとアメリカでこの変異型の感染者は0.1%にしか発見されていないが、どんどん拡大している恐れがある。
・I472V変異型
これは、もっとも抗体の耐性が高いとされる変異型だ。やはりアメリカとヨーロッパで拡大していることが確認されている。さらに「I472V」は、免疫系のいわば司令塔にあたるT細胞が反応しない可能性が高いとも指摘されている。これから研究論文が公表されるようだが、これは免疫系をすり抜けてしまう変異型なのかもしれない。
これらはいずれも免疫に対する耐性を持っているので、高い感染力がある。新型コロナウイルスの変異のスピードは速い。
Next: 猛威を振るう変異型、すでに日本に入ってきている?