パナソニックホールディングスが、ついに抜本的な構造改革に踏み切った。2025年3月期の決算は営業利益が前年より増加するなど一見堅調にも見えるが、同時に発表されたのは国内外で合計1万人の人員削減。なぜ、業績が悪化していないこのタイミングで、ここまでの大リストラが必要だったのか。背景には、未達に終わった中期計画、同業他社との収益力の格差、そして長年放置されてきた経営課題がある。(『 元証券会社社長・澤田聖陽が教える「投資に勝つニュースの読み方」 元証券会社社長・澤田聖陽が教える「投資に勝つニュースの読み方」 』澤田聖陽)
※本記事は有料メルマガ『元証券会社社長・澤田聖陽が教える「投資に勝つニュースの読み方」』2024年5月13日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はぜひこの機会にバックナンバー含め今月分すべて無料のお試し購読をどうぞ。
プロフィール:澤田聖陽(さわだ きよはる)
政治経済アナリスト。国際証券(現:三菱UFJモルガン・スタンレー証券)、松井証券を経て、ジャフコ、極東証券にて投資業務、投資銀行業務に従事。2013年にSAMURAI証券(旧AIP証券)の代表に就任。投資型クラウドファンディング事業を立ち上げ拡大させる。現在は、澤田コンサルティング事務所の代表として、コンサルティング事業を展開中。YouTubeチャンネルにて時事ニュース解説と株価見通しを発信している。
1万人の大規模リストラ
パナソニックホールディングス(パナソニックHD)は5月9日、構造改革の一環として1万人規模の人員削減を行うと発表した。
内訳は、国内5,000人・海外5,000人となる計画だ。
同社には2024年3月末時点において連結ベースで22万8,420名の社員がおり、1万人は全従業員の4%程度にあたる。
パナソニックはなぜ今、これほど大規模のリストラを行うのか?以下、同社の現状とリストラを行う背景を説明していく。

パナソニック ホールディングス<6752> 週足(SBI証券提供)
2025年3月期は黒字
同社は5月9日に2025年3月期の決算発表も行っている。決算数値は、以下のとおりである。
売上:8,458,185百万円(前年同期比▲0.5%減)
営業利益:426,490百万円(前年同期比18.2%増)
税引前利益:486,289百万円(前年同期比14.4%増)
当期純利益:384,396百万円(前年同期比▲14.4%減)
親会社の所有者に帰属する当期純利益:384,396百万円(前年同期比▲17.4%減)
前年にパナソニック液晶ディスプレイの解散(特別清算)および同社に対する債権放棄を決議したことに伴う法人所得税費用の減少があった反動により、親会社の所有者に帰属する当期純利益ベースでは減益となったが、業績が特段悪いというわけではない。
なお過去5期の売上、営業利益の推移は以下のとおりである。
2025年3月期:売上 8,458,185百万円, 営業利益 426,490百万円
2024年3月期:売上 8,496,420百万円, 営業利益 360,962百万円
2023年3月期:売上 8,378,942百万円, 営業利益 288,570百万円
2022年3月期:売上 7,388,791百万円, 営業利益 357,526百万円
2021年3月期:売上 6,698,794百万円, 営業利益 258,600百万円
楠見社長は2021年6月に同社の代表取締役社長CEOに就任しているのだが、2022年3月期以降の数値を見ると、2023年3月期はいったん減益になっているものの、その後は増益基調で推移している。
一見すると、これほど大規模のリストラをするようには見えないが、今回リストラを発表したのには理由がある。
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