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株価急騰「FRONTEO」長期投資家は買い?AI創薬は本物か、“プレスリリース芸”か=佐々木悠

現在、株価が急騰し、多くの注目を集めているAI企業「FRONTEO(フロンテオ)」<2158>について掘り下げていきたいと思います。特に、AIを活用した医薬分野(創薬)への進出が成功しているというリリースが出たことで、株価が急騰しています。果たしてこの会社は「本物」なのか、「偽物」なのか、深掘りして分析していきます。(『 バリュー株投資家の見方|つばめ投資顧問 バリュー株投資家の見方|つばめ投資顧問 』佐々木悠)

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プロフィール:佐々木悠(ささき はるか)
1996年、宮城県生まれ。東北学院高校、東京理科大学経営学部卒業。協同組織金融機関へ入社後、1級ファイナンシャル・プランニング技能士を取得。前職では投資信託を用いた資産形成提案や多重債務者への債務整理業務に従事。2022年につばめ投資顧問へ入社。

フロンテオとは一体どんな会社なのか?

フロンテオは「読み込み特化型AIの開発企業」と言えます。その事業内容は大きく分けて2つあります。

<1. AIソリューション事業>

  • ライフサイエンスAI
  • 今回話題の中心となっている分野で、創薬における文献リサーチAIを提供しています。顧客には武田薬品工業、中外製薬、第一三共といった大手製薬メーカーが名を連ねています。

  • ビジネスインテリジェンス
  • コンプライアンス対策のAIです。メガバンクや東京海上日動といった金融機関が主な顧客で、顧客との接触や日々のメールなどを監視し、コンプライアンス違反や不正がないかをチェックするサービスです。

  • 経済安全保障
  • 三菱自動車などが代表的な顧客で、サプライチェーンの可視化や情報漏洩のチェックなど、グローバル企業や官公庁の安全チェックサービスを提供しています。

<2. リーガルテックAI事業>

フロンテオの創業事業であり、米国訴訟に対するサービスを提供しています。日本のグローバル企業がアメリカで訴訟を起こされた際に、資料の収集や整理を支援する伝統的な事業です。

まさにAIの最先端を行く企業であり、特にアメリカで盛り上がっている安全保障分野のAIや、AIによる創薬といった分野にも近い位置にいます。

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フロンテオ創業の経緯とAI事業への転換

フロンテオの創業者で現社長の守本正宏氏の経歴は非常にユニークです。学生時代は宇宙飛行士を目指して防衛大学に進学し、パイロット志望でしたが、視力の問題で海上自衛隊に入隊しました。その後、半導体大手のアプライドマテリアルズ(アマト)の日本法人に転職し、そこで「ディスカバリービジネス」を知ったと言います。

ディスカバリービジネスとは、日本やアジアの企業がアメリカで訴訟を起こされた際に、米国企業は情報収集に長けているのに対し、日本企業はそれができずに裁判に負けてしまうという問題がある中で、これを何とかしたいという思いから、2003年にフロンテオを創業しました。当初はAIの会社というよりは、アメリカでの訴訟に巻き込まれた日本企業を助ける目的で始まりました。日本の大手グローバル企業を裏方から支えるビジネスだったと言えます。

FRONTEO<2158> 日足(SBI証券提供)

FRONTEO<2158> 日足(SBI証券提供)

では、どのようにしてAI事業へと入っていったのでしょうか。

創業当初の2003年頃は、アメリカで開発されたリーガルテックツールを独占輸入販売し、日本の企業に提供する商社のような位置づけでした。しかし、2010年頃になると、日本語の言語処理に対応するには海外のツールでは限界があると感じるようになり、独自の自社開発へと転換しました。

この転換期に、現在の基盤となっているAI「KIBIT(キビット)」の原型が開発されました。具体的には2012年から2014年頃にかけて開発が進められました。これは、現在の生成AIブームにポンと乗っかった会社というわけではなく、AIの黎明期から独自のAI開発を進めてきた企業であることを示しています。

Next: なぜ株価急騰?ライフサイエンスAIの画期的な発見

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