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株価低迷「クボタ」今が買い?コメ増産政策、インド市場開拓の行方を長期投資家はどう見るべきか=佐々木悠

今回は、直近で下方修正を発表し、株価も軟調に推移しているクボタに焦点を当てて分析します。一部の投資家からは「割安株大企業」として注目されていますが、本当にこの会社に投資して良いのか、下方修正の理由から長期的な成長性まで、多角的な視点から深掘りしていきましょう。(『 バリュー株投資家の見方|つばめ投資顧問 バリュー株投資家の見方|つばめ投資顧問 』佐々木悠)

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プロフィール:佐々木悠(ささき はるか)
1996年、宮城県生まれ。東北学院高校、東京理科大学経営学部卒業。協同組織金融機関へ入社後、1級ファイナンシャル・プランニング技能士を取得。前職では投資信託を用いた資産形成提案や多重債務者への債務整理業務に従事。2022年につばめ投資顧問へ入社。

クボタの事業概要:世界を舞台にする農業・水インフラの巨人

まず、クボタがどのような事業を展開しているのかを見ていきましょう。

<グローバルな事業展開:海外売上比率80%超>

クボタは大阪の企業ですが、売上高の地域別構成を見ると、日本は21%に過ぎません。最大の市場は北米で42%を占め、その他ヨーロッパや日本を除くアジア(インド、中国など)にも市場を持っています。海外売上比率が80%を超える点が特徴です。

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出典:クボタ

<2つの主要事業:機械事業と水環境事業>

クボタの事業は大きく以下の2つに分かれます。

【機械事業】

  • 農業機械:田植え機、トラクターなど農業関連製品。
  • 産業用エンジン:さまざまな産業機械に利用されるエンジン。
  • 建設機械:工事現場で使われるミニショベルなど。 この機械事業が売上高の90%以上を占める主力事業です。

【水環境事業】
水道用の鉄管、プラント、バルブなど、水のインフラを整備するための部品や素材を取り扱っています。テレビCMでも「世界の水インフラ」を謳うなど、事業の公共性が高い点が特徴です。

 

2024年12月期の実績では、機械事業が約2兆6,000億円、水環境事業が約3,500億円で、合わせて3兆円規模の売上高を誇る大企業です。

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出典:クボタ

直近の業績と下方修正の背景

クボタの株価は、2013年から2020年にかけては2,300円前後、その後1,600円~1,800円のレンジで推移していました。コロナ禍で一時下落しましたが、その後回復し2,700円台をタッチ。しかし、2024年に入ってからは再び下落傾向にあります。

クボタ<6328> 月足(SBI証券提供)

クボタ<6328> 月足(SBI証券提供)

先日発表された2025年12月期第2四半期決算では、以下の下方修正がありました。

  • 営業利益:当初予想2,800億円 → 2,200億円 (600億円減)
  • 売上高:当初予想3兆円 → 2兆8,000億円 (2,000億円減)

この修正後の売上高2兆8,000億円という水準は、コロナ禍前後の2兆6,000億円台とほぼ同じ水準に戻った形となります。

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出典:クボタ

<下方修正の主な要因:アメリカ市場の逆風>

クボタの下方修正の背景には、主に最大市場であるアメリカでの需要低迷と競争激化があります。

【家庭用トラクター需要の先食いと競争激化】

  • 日本のイメージとは異なり、アメリカでクボタが主に販売しているのは、乗用芝刈り機や小型トラクター(UTVビークル)など、広大な庭を持つ一般家庭向けの製品です。これは、日本で培った「小回りが利き、操作性の良い機械」を作る技術が、アメリカの広大な農場向け大型機械市場では競争力が低かったため、家庭用市場に活路を見出した結果です。
  • コロナ禍特需の反動:コロナ禍で在宅時間が増えたアメリカの一般市民が、庭の手入れのためにこれらの家庭用トラクターを多く購入しました。これが2020年〜2021年の売上増加に繋がりましたが、毎年買い替えるような製品ではないため、需要の先食いという形で現在は販売が伸び悩んでいます。このトレンドは2022年頃から続いています。
  • 価格競争と住宅着工件数の伸び悩み:アメリカの小型トラクター市場でクボタは27%のシェアでトップですが、韓国やインド系の企業(例:マヒンドラ)が参入し、価格競争が激化しています。さらに、新規住宅着工件数が伸び悩んでいることも需要低迷に拍車をかけています。

【建設機械需要の反動】
家庭用トラクターの需要が伸び悩む中、2023年の業績を支えたのは建設機械事業でした。

  • バイデン政権のインフラ投資:2021年に成立したバイデン政権のインフラ投資法により、道路やビルの建て替えといったインフラ整備が活発化し、クボタの建設機械の需要が大きく伸びました。
  • 流通在庫の積み上がり:しかし、直近3年ほどで建設機械の需要が大きく伸びた結果、流通在庫が積み上がり、現在は販売が難しくなっています。

【関税の影響と競合の状況】
今回の下方修正には、当初予想されていなかった350億円の関税によるマイナス影響も織り込まれています。 また、この状況はクボタに限ったことではありません。アメリカの大手建設機械メーカーであるジョンディアも営業利益が前年比で約30%減となっており、クボタも同様のマイナス幅です。これは、アメリカ市場全体が現在難しい局面にあることを示唆しています。

回復の鍵は、アメリカの設備投資需要や新規住宅着工件数の増加にかかっていると言えるでしょう。

Next: なぜ下方修正で株価上昇?長期的な成長戦略を見ると…

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