内閣府による「不正」の手口とは?
景気が拡大局面にあるのか後退局面にあるのか、その判断をするのは、内閣府内に設置された「景気動向指数研究会」で、これは内閣府が「事務局」を務めるものの、実際の判断を下すのは「研究会」のメンバーたる民間エコノミストや経済学者になります。
そしてここが重要なのですが、従来の景気判断では、この「事務局」はデータと材料を提供するのみで、その結論は「研究会」のメンバーに委ねていました。
例えば、2013年8月の会合では事務局から「12年4月が景気の山の候補になる」との材料、14年5月の会合では「12年11月が景気の谷の候補となる」との材料がそれぞれ提供され、そのデータを研究会のメンバーがチェックする形で結論を導いていました。
そして結果的には、事務局が候補として挙げた12年4月を「景気の山」、12年11月を「景気の谷」とする認定につながりました。
この判断のもとになるのは、景気動向指数のうち、一致指数を構成する9つの指標です。それぞれについて、12カ月移動平均を計算し、そのピーク時点を求め、その翌月から傾向として下降した時のボトムを求めます。その間が「下降」期間となり、指標によってこれは変わりうるのですが、「上昇」を示唆する指標の割合が14年4月に50%を割り込み、その状況が16年2月まで続きました。
揉み消された「23カ月間の景気後退」
この場合、通常なら景気の「山」が14年3月となり、翌4月から16年2月までが景気後退局面となります。これまで、この方法で求められた景気の「山」「谷」がこの指標から導かれた結論とすべて一致し、その間が景気後退期と認定されてきました。
ところが、今年6月の会合では、「14年3月に山は設定されない、と考える」と、先に事務局が結論を出してしまい、研究会のメンバーはこれを了承するしかない状況となりました。
従来通りのやり方であれば、14年3月が景気のピークとなり、その後16年2月までの23カ月間は「景気後退」ということになります。ところが、内閣府の独断で、後退なしに5年近く拡大が続いている、とされてしまったのです。
Next: 安倍政権の都合に悪い「景気後退」は認めないのか?