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トレーダーの利益の源泉~効率的市場仮説の「つけ入る隙」を考える=田渕直也

効率的市場仮説のどこが間違っているのか

効率的市場仮説で描かれるマーケットでは、価格は常に均衡水準と呼ばれるその時点でのベストエフォートベースの適正価格に収れんしています。

将来その企業は大きく利益を伸ばすだろうとか、財務が悪化して倒産の危険性が高まるなどといった予想も、現時点で合理的に予測が可能な部分は現在の株価に織り込まれています。

それが、ベストエフォートベースという意味で、そこに織り込まれている予想が必ず実現するというわけではありません。

世の中は絶えず変化していますから、価格に織り込まれていない全く新しい情報、つまり、その情報が発生するまでは誰もそれを合理的には予想しえなかったような新たな情報がもたらされることがあります。

そうすると、マーケットはその情報を織り込んだ新たなベストエフォートベースの適正価格を探りに行くことになります。

このときに、だいたい以下の3条件を満たしていると、適正価格はすぐにみつかり、市場は基本的に効率的な状態を維持することになります(ちなみに効率的とは、その時点で利用可能な情報がすべて株価に織り込まれているというような意味です)。

  1. 株価に影響を与える情報が、瞬時にあまねく伝わる(情報の伝達コストがゼロ)
  2. 取引をするのに余計な手数料や税金がかからず、いつでも自由に取引できる(取引コストがゼロ)
  3. 投資家はその時点で利用可能な情報を使って割り出した適正価格と実際のマーケット価格を比較して投資行動を決定する(投資家の合理的行動)

そして、この3条件が満たされて市場が効率的になると、相場はランダムに動くことになるというのがこの理論の帰結です。

ランダムな変動とは、誰にも予測できない偶発的な動きを意味します。ですから、ランダムな変動の中では、どんなに知識を備えても、どんなに洗練されたやり方を身に着けても、相場の変動を予測することはできないので、期待リターンはゼロのままとなります。

つまり、「効率的な市場」というのは、勝ち負けが完全に偶然にのみ左右される市場です。トレードは、スキルや知識などと全く関係のない純粋な博打ということになります。

もう一度繰り返しますが、そんなのは机上の空論だと一蹴すべきではありません。私もこの効率的市場仮説は不完全であると思っています。でも、現実の市場が完全に効率的でないとするならば、今説明してきた前提条件のどこかに誤りがないといけないのです。

ではどこに誤りがあるのか。それを考えていかなければ、市場の非効率な部分(期待リターンをプラスに出来る部分)がどのようなものかも見えてきません。

Next: 「効率的な市場」の3条件のうち、誤りはどこにあるか

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