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米金利上昇は口実、買われすぎの反動に要警戒。日経平均はいったん2万5000円割れへ=馬渕治好

盛りの花~世界経済・市場の注目点

<週末の米雇用統計に対する市場の反応についての、一つの解釈>

先週末 3/5(金)の2月の米雇用統計については、最も注目されている非農業部門雇用者数の前月比について、1月分が4.9万人増から16.6万人増に大きく上方修正されたうえ、2月分は37.9万人増と大幅な増加幅となりました。

米国市場においては、同統計発表後しばらくは、雇用が強いとして、米長期金利が上昇、米ドル相場も上昇した一方、米国株価(特に金利の影響が大きいと解釈されているナスダック総合指数)が下落しました。米10年国債利回りは一時1.62%に達し、米ドル相場も対円で108.64円までもの米ドル高となりました。ナスダック総合指数は、ザラ場安値では前日比2.57%安まで下振れしました。

しかし引けにかけては、10年国債利回りは1.55%にまで低下して、米ドルは108.40円近辺に若干ですが軟化して、ナスダック総合指数は切り返して前日比1.55%高となりました。

こうした上下動は、解釈が難しいと思いますし、おそらく「これが真の要因だ」というものもないのでしょう。ただ、筆者が「もしかするとこういう背景かもしれない」と考えているのは、述べたように、当初は雇用統計が強いと解釈されたものの、内容を精査すると意外と弱い、という見解が広がっていったためではないでしょうか。

まず、労働者全員で受け取っている週当たり賃金の合計額をみると、雇用者減(失業者増)を主因として昨年4月には前年比が7.0%減まで大きく落ち込みましたが、徐々にコロナ禍を抜け出して、昨年12月にプラス転換し、今年1月は前年比で0.4%増まで回復していました。ところが先週末に発表された2月分では、賃金合計額は前年比で0.7%減と、再度マイナス圏に転落しています。

また、前月比で37.9万人増加した非農業部門雇用者数の業種別内訳をみると、最も雇用が伸びた産業はレジャー業並びに接客業(leisure and hospitality)で、35.5万人増です。つまり、コロナ禍で打撃を大きく受けた業態の雇用のリバウンドといった色彩が強く、幅広い業種での持続的な雇用増とは言い難いです。

このため、2月の雇用統計は、当初の見出し(非農業部門雇用者数全体)に比べると、実は内容が弱めだったと言え、そうした弱さが遅れて市場に知れ渡ったのではないか、と推察しています。

中期シナリオ結論(2021/02/07時点)

(毎号最後に掲載します。変える必要がないと考えている間は、全く変えません。)

主要国の株価は、長期上昇基調にあると考える。ただし、少し前までの株高は急速過ぎたため、短期的な反落がこれから生じると予想する。

<短期展望~2021年初め頃>

少し前までの株高は、勢いだけが頼みの、危ういものであった。加えて、市場は新型コロナウイルスワクチンの開発動向や米国の経済対策期待など、最近の好材料を何度も蒸し返してはやし過ぎている感が強い。景気動向も、足元は一服商状を強めているが、それと株価の強調展開の乖離も大きかった。物色についても、たとえば日本株では日経平均先行に過ぎるなど、脆弱さがあった。このため、これまで上昇が急だった主要国の株価指数は、これから下落基調を鮮明にする可能性がある。

今後、いつまでどこまで下落するのは、見通しが難しい。ただ、それでも(見通しが大きく外れるリスクを冒して)最もありそうだと考えるシナリオをあえて提示すると、日経平均株価はいったん2万5,000円割れとなろう。

<中長期展望~2021年末に向けて>

経済や企業収益の回復は、かなり明確になってきた。ただし、回復基調は、これから極めて緩やかだろう。したがって、株価の高さと実体経済の低空飛行の差が、高PERという形で表れている。だから株価が基調として下落に向かうかといえば、そうではなく、市場は、もっと先までの回復を展望し(織り込んでおり)、上の位置で実体経済・企業収益が追い付いてくるのを待つだろう(結果として、時間をかけてPERが低下する)。主要国の財政・金融政策も、景気と株価の下支えに働いている。

2021年を通じて、主要国の株価や外貨相場(対円)は、短期的な上下の振れを繰り返しながらも、諸データに示される緩やかな世界経済の回復を踏まえながら、基調としては、持ち合いに上昇の色合いがついたような、じわじわとした株高・外貨高傾向を続けるだろう。

具体的には、日経平均株価は、2021年末までに3万円に迫ると予想する。米ドル円相場は、目先はいったん米ドル安・円高方向に振れる恐れが残るが、振れ幅は極めて限定的(1ドル100円前後まで)で、むしろ2021年は110円超えとなるだろう。ただし、2021年の外貨の上昇力は、米ドルより非米ドルの先進国通貨(欧州通貨や豪ドルなど)の方が勝るだろう。

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理解の種~世界経済・市場の用語などの解説:IMM、商業筋、非商業筋

脇道の花~道草の話題:「早く米長期金利動向とは関係ない相場になって欲しい」との声

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馬渕治好の週刊「世界経済・市場花だより」』(2021年3月7日号)より一部抜粋
※太字はMONEY VOICE編集部による

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