fbpx

ひとり親世帯の8割が養育費を受け取れぬ現実。貧困家庭を生む2大要因と解決策=俣野成敏

「共同親権」実現への道のりは遠い

千葉大学教授の大石亜希子氏が2012年に発表した分析によると、離別(離婚)後、単身父親の年収は350万円未満の人が5割以上を占め、2割弱は年収140万円未満だったといいます。

離別父親の再婚率は59.2%ですが、再婚者は年収の高い層に偏っており、高所得者層の父親の養育費支払い率は約半分とのことでした。

つまり、貧困層の父親は収入が少なくて養育費が支払えず、年収が比較的高い層の父親は、再婚するなどして新しい人生を歩んでいるために養育費を支払っていない、という状況が一部では生まれている、ということです。
※参考:『離婚の経済学 愛と別れの論理』(著:橘木俊詔ほか/刊:講談社)

おそらく親権が元パートナーに渡り、長期間、子どもに面会できなかったりすると、子どもに対する責任感が薄れたり、目の前の生活に手一杯になったりしがちになる、ということなのかもしれません。

念のためにお伝えしておくと、女性ばかりが辛い思いをしているわけではありません。
※参考:離婚後の単独親権「合憲」 賠償請求は棄却、東京地裁: 日本経済新聞(2021年2月17日配信)

もちろん、一概に単独親権がよくない、ということではなく、メリット・デメリットの両方が考えられます。たとえば「共同親権の場合に起こりうる親同士の争いから子どもを遠ざけることができる」「元パートナーがDVの加害者だった場合、親権から排除できる」などが挙げられます。

現在、日本でも共同親権についての検討に入っているものの、親権制度の変更は、それに伴う法改正や支援体制も同時並行で整えていく必要があり、道のりは平坦ではありません。

民法改正によって生まれた新たな市場「養育費代行サービス」

当然、国も、この状況をただ黙って見ているわけではありません。

2011年の民法改正では、第766条に「離婚後の、子どもとの面会交流や養育費の分担について明示する」こと、第820条に「子どもの利益のために(親権者は監護や教育を行う)」という文言が付け加えられました。
※参考:児童虐待から子どもを守るための 民法の「親権制限制度」 − 政府広報オンライン(2017年10月13日配信)
※参考:民法等の一部を改正する法律の概要について – 法務省

また2003年の民法改正によって、初めて債務者(養育費を支払うべき親)の財産を自ら開示させる「財産開示制度」が創設されました。

これによって養育費不払い問題も前進するかと期待されましたが、罰則が弱い等の理由で、十分に機能しているとはいえない状態でした。

そこで2019年、さらに民法が改正され、ようやく第三者からも債務者財産に関する情報を取得することが可能となりました。

これは、銀行等から預貯金等の情報を取得できるようになった他、登記所から不動産に関する情報を取得できたり、市町村等から勤務先に関する情報取得が可能になったりするなど、画期的な内容となっています。
※参考:養育費の履行確保に向けた取組 – 法務省民事局
※参考:LIBRA 2020年 4月号 – 東京弁護士会

この法改正によって、今、養育費代行サービスが注目されています。

養育費代行サービスとは、サービスに申し込むと、サービス提供者が状況を審査します。審査に通ると、代行業者が手数料を差し引いた上で、ユーザーに養育費を立替払いした後に、支払人に養育費の請求を行う、というものです。

このサービスの草分け的存在となっているのが、通販サイトZOZOTOWNの創業者である実業家の前澤友作さんです。前澤さんは「2021年は13の事業に挑戦し、そのすべてで上場を目指す」としています。その中の1つが、ひとり親の方への支援事業です。

今まで養育費を受け取れていなかった人にとっては、スマホからの申し込みだけで養育費が受け取れるようになるわけですから、かなりハードルが下がるのは間違いないでしょう。

Next: 行政が立替?明石市の取り組み/養育費「詐欺」にも要警戒

1 2 3 4 5
いま読まれてます

この記事が気に入ったら
いいね!しよう

MONEY VOICEの最新情報をお届けします。

この記事が気に入ったらXでMONEY VOICEをフォロー