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ひとり親世帯の8割が養育費を受け取れぬ現実。貧困家庭を生む2大要因と解決策=俣野成敏

「養育費が払われない」2つの要因

「養育費を受け取れていない」2つの大きな要因として、以下の2点が考えられます。

1. 離婚する際に、養育費や面会等の取り決めをしていない
2. 現状、日本の親権が共同親権ではなく「単独親権」となっている

それぞれ、理由を掘り下げて考えてみましょう。

<1. 離婚する際に、養育費や面会等の取り決めをしていない>

(1)の養育費等の取り決めをしていない理由として、「相手と関わりたくない(29.3%)」「相手に支払う能力がないと思った(21.0%)」の2つが高い数値を示しています。
※参考:平成28年度全国ひとり親世帯等調査結果報告 – 厚生労働省

離婚に至るまでの間は、感情的なもつれや、金銭的な問題などから、冷静に離婚条件を取り決められる状態ではなかったことが想像されます。

しかし、それだけではありません。

実は、日本では現状、養育費等を取り決めなくても、離婚することが可能です(諸条件あり)。

法律上、日本では4種類の離婚があります。「協議離婚」「調停離婚」「審判離婚」「裁判(判決)離婚」の4つです。

協議離婚は、夫婦で離婚の意思を確認した上で、役所に離婚届を提出する、というものです。
調停離婚は、協議が上手くいかない場合に、家庭裁判所に介入してもらう方法です。
審判離婚は、調停離婚で詰め切れなかった場合に、家庭裁判所が職権で離婚を認める制度です。裁判離婚は、調停離婚でも審判離婚でも解決しない場合に、裁判で離婚を求める方法です。

日本では、離婚の約9割は協議離婚が占めています。そのため、養育費等の取り決めをきちんと行わないまま、離婚してしまうパターンが多いのです。
※参考:『離婚の経済学 愛と別れの論理』(著:橘木俊詔ほか/刊:講談社)

<2. 現状、日本の親権が共同親権ではなく「単独親権」となっている>

次に、(2)の「日本の親権」について見ていくことにしましょう。

親権とは、未成年の子どもを育てるために親が持つ権利と義務の総称です。「子どもの世話や教育などを行う」権利を持つと同時に、それが義務でもあるという、複雑な構造になっています。
※参考:児童虐待から子どもを守るための 民法の「親権制限制度」 − 政府広報オンライン(2017年10月13日配信)

子どもの親権に関して、日本では、婚姻中は夫婦の共同親権となっています。しかし離婚後は、いずれか一方の単独親権となります(民法819条1項)。協議離婚をする際、子どもの親権者を父母のどちらにするのかを決めることが定められています。

世界的に共同親権がスタンダードの中で、日本が単独親権になっている理由は、「夫婦が離婚すれば別居することになるため、共同親権を行使することが難しい」から、というのが根拠の1つになっているようです。
※参考:『親権と子ども』(著:榊原富士子ほか/刊:岩波書店)

先にも述べたように、現状、日本では養育費や面会等についての取り決めをしなくても、離婚が成立します。

この制度的なゆるさと、「日本は単独親権である」という点とが重なり、養育費不払い問題につながっていることが推測されます。

Next: 貧困で払えない低所得の父親、再婚して過去を捨てる高所得の父親も

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