日本を含む主要国が次々に「脱炭酸」を掲げ、世界の潮流は電気自動車に向かおうとしています。そこには日本車ならではの優位性が維持できなくなります。(『マンさんの経済あらかると』斎藤満)
※有料メルマガ『マンさんの経済あらかると』2021年4月2日号の一部抜粋です。ご興味を持たれた方はぜひこの機会にバックナンバー含め今月すべて無料のお試し購読をどうぞ。
プロフィール:斎藤満(さいとうみつる)
1951年、東京生まれ。グローバル・エコノミスト。一橋大学卒業後、三和銀行に入行。資金為替部時代にニューヨークへ赴任、シニアエコノミストとしてワシントンの動き、とくにFRBの金融政策を探る。その後、三和銀行資金為替部チーフエコノミスト、三和証券調査部長、UFJつばさ証券投資調査部長・チーフエコノミスト、東海東京証券チーフエコノミストを経て2014年6月より独立して現職。為替や金利が動く裏で何が起こっているかを分析している。
“天動説”を疑えない雰囲気
多くの日本人は、太陽が東の空から登り、西に沈むと当たり前のように言います。しかし、500年以上も前にコペルニクスがこれに異を唱え、地球が太陽の周りをまわっているのだと説いても、なかなか信じてもらえませんでした。
北極の氷が解け、白熊が氷から海に落ちるシーンや異常気象、海面上昇で南の島国が海に沈むとの懸念から、地球温暖化を何としても阻止し、これをもたらす温室効果ガスの増加を抑えよとの考えが、米国のアル・ゴア氏の『不都合な真実』を契機に高まりました。
トランプ前大統領がこれを否定しましたが、バイデン民主党政権になって息を吹き返しました。これに異を唱える雰囲気ではありません。
正体不明の新型コロナウイルスのワクチンをいち早く開発した欧米や中国の薬品メーカーはこれでひと儲けしそうですが、二酸化炭素が温暖化の原因かどうかには確かな説はありません。
それでも、声の大きな国がこれを「定説化」して、これをビジネスに結び付けようとしているのも事実。
排出権売買もその1つです。
日本も脱炭素化宣言
日本の菅政権もこの「大きな声」に答え、2050年をめどに脱炭素社会を構築すると明示しました。そして、デジタル化とともに、アフターコロナのビッグビジネスととらえて予算を組んでいます。
海洋風力発電など、再生可能エネルギーの推進をうたいますが、依然として原発に大きく依存する前提に、異論も少なくありません。
その中で自動車の電気自動車化も大きな柱となり、2035年までにガソリン車の新車販売を停止するとしています。
この急転換に、業界には衝撃が走りましたが、もはや世界の潮流となっただけに、日本だけが拒むわけにもいかなくなりました。
米国ではテスラ社の株式時価総額がトヨタを大きく凌駕するようになり、欧州も中国もEV化を進めています。