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なぜ人権にうるさい韓国がウイグル問題に触れぬ?二番煎じの米韓会談で文在寅は窮地に立つ=勝又壽良

日米首脳会談の概略

ここで、日米首脳会談の概略を見ておきたい。

1)台湾海峡の平和と安定の重要性を強調
2)日米安保条約5条を尖閣諸島へ適用することを再確認する
3)半導体などのサプライチェーンで連携
4)香港や新疆ウイグル自治区の人権状況への深刻な懸念共有
5)脱炭素へ2030年までに確固たる態度を取る
6)日本の今夏の五輪開催への努力を支持

上記6項目中、韓国と無関係なのは(2)と(6)である。他は、すべて韓国も関係している。

その意味で、日米首脳会談の共同声明は、5月下旬に予定されている米韓首脳会談の「ひな形」と見るべきだろう。

米国は、あえて米韓首脳会談を日米首脳会談よりも1ヶ月以上遅らせ、韓国に決意を迫っていると考えられる。米韓首脳会談の共同声明が、日米首脳会談よりも「低級」であれば、中国に付け入る機会を与えかねないのだ。

となれば、米国が韓国へも強い姿勢で迫ることが予測できよう。

日韓の置かれた同一条件

前記の主要項目について、私のコメントを記しておきたい。

(1)台湾海峡の平和と安定の重要性を強調している点は、韓国も無縁でない。日米共同声明で「台湾」が明記されたのは52年ぶりである。米中関係が、米ソ対立の冷戦時代へ逆戻りしているという意味だ。韓国には、そのような認識はゼロである。よりによって、鄭義溶(チョン・ウィヨン)外交部長官が4月2、3日に中国を訪問し、王毅外相と会談した。その席で、中韓外務・国防「2+2会議」の開催を決めた。出席者のレベルは低くすると言う。

米中対立が深刻化している中で、米同盟国の韓国が中国へ接近するのは何とも不思議な現象である。多分、国際情勢が急変していることへの認識が不足している結果であろう。米韓首脳会談では、この点を米国から糺されるであろう。

(3)半導体などのサプライチェーン連携は、急ピッチで進んでいる。バイデン大統領は2月半ばに、半導体・バッテリー・レアアース・医薬品の4分野におけるサプライチェーンの問題点を100日かけて検討する行政命令に署名した。このような動きは、「米国が特定の国の特定の商品にあまりにも依存し過ぎているのではないか」という懸念から始まったもの。

この戦略製品については、韓国も該当する。韓国では、半導体とバッテリーを生産している。米ホワイトハウスは最近、韓国企業へ直接連絡してくるという。ホワイトハウスは、半導体会議にサムスン電子を呼び、LGとSKによる電気自動車用バッテリーの営業機密訴訟に介入して合意を引き出した裏方とされている。『朝鮮日報』(4月17日付)が伝えた。

バイデン政権は、前政権時代に想像もできない芸の細かさを見せている。「ピンセットとメスを持った外科手術」で、個別企業を調べていると言われるほど、産業動向に細心の注意を払っている。これは、半導体の確保を国の安全保障問題と認識し、地政学的な価値をデジタル・サプライチェーンと連結して考えている結果だ。

ここでいう「地政学的価値」とは、地理と政治が密接な関係にあるという認識である。例えば、韓国を例にとると38度線で北朝鮮と対峙している意味で、韓国の地政学的な意味は大きい。その上、半導体とバッテリーの主要生産企業を擁していることから、韓国は2つの意味で西側諸国にとって重要な役割を担っているのだ。ホワイトハウスが、韓国企業に電話を掛けてくる理由もこれである。

Next: 韓国の人権論は日本向け。ウイグル問題には踏み込めない

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