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遺言書を作った父が認知症に…効力はあるか?相続問題に発展する2つのリスク=池邉和美

リスクその1:遺言書を廃棄されるケース

1つは、仮にその遺言が自筆証書遺言で、かつ法務局に預け入れたりしていなかった場合、その遺言を紛失してしまったり、家族が勝手に捨ててしまったりするリスクです。

もちろん、遺言書を勝手に破棄することは違法ですし、相続欠格にも該当します。

とは言え、他に遺言書の存在を知る人がいなかったり、「認知症の本人が勝手に捨てた」と言われてしまえば、現実的に、罪に問うのは難しい場合もあるでしょう。

そのような事態を防ぐため、財産の多寡にかかわらず、遺言書は公正証書で作成しておくことをお勧めします。

仮に、自筆証書で作成するとしても、法務局での保管制度を利用するようにし、自宅での保管は避けるようにしましょう。

リスクその2:成年後見人がつくと財産が変動する可能性も

2つ目のリスクとしては、認知症となり成年後見人等が選任された場合、財産の内容が変動する可能性がある点です。

成年後見人がつくと、大半の預貯金などを解約のうえ信託銀行などに信託し、その都度、必要な分だけを引き出すような形で財産管理をするケースがあります。

これは、成年後見人による使い込みなどを防ぐ目的などで行われる管理方法で、近年増えているようです。

しかし、遺言書の記載が、「A銀行の預金は長男の太郎に相続させる。B銀行の預金は長女の花子に相続させる」といったように、金融機関ごとに相続人を決めていたような場合には、預貯金が解約されてしまうことにより、実現が難しくなってしまうという問題があります。

遺言書作成には専門家への相談が有効

このようなリスクを避けるため、遺言書の記載方法を工夫しておくと良いでしょう。

たとえば、金融機関ごとではなく、「預貯金や金融資産は、長男の太郎に3分の2、長女の花子に3分の1の割合で、それぞれ相続させる」と指定するなどです。

とは言え、それぞれの書き方に一長一短がありますので、これは実際に遺言書をつくる際に専門家へ相談しながら、個別事情により書き方を検討されることをおすすめします。

遺言書を作成したあとで遺言者が認知症になっても、遺言書の効力には影響ありません。

それでも、このようなリスクがありますので、これらのリスク減らす形で形式や内容をよく検討のうえ、遺言書を作成しておくようにしましょう。

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image by:Twinsterphoto / Shutterstock.com

こころをつなぐ、相続のハナシ』(2021年4月28日号)より一部抜粋
※タイトル・見出しはMONEY VOICE編集部による

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