中国もタリバンを容認
また中国もタリバン政権の容認には前向きだ。意外に知られていないが、中国は長年アフガニスタンからの米軍撤退を求め、タリバンの代表団を繰り返し中国に招いている。2019年には、タリバン政治部門のトップを務めるアブドゥル・ガニ・バラダルの訪問を受け入れた。今年に入ってからは、中国はアフガニスタン政府とタリバンの和平交渉の開催を提案している。
中国がタリバン政権の容認に積極的なのは、中国・新疆ウイグル自治区出身のイスラム過激派「東トルキスタン・イスラム運動(ETIM)」の戦闘員が、中国国内に侵入し、テロを引き起こす恐れがあるからだ。
いまこの組織に所属する戦闘員は500名ほどが、アフガニスタンに潜伏しているが、さらにシリアにいる相当数の戦闘員が、アフガニスタンに帰還する動きを見せている。かつてタリバンは「東トルキスタン・イスラム運動(ETIM)」を資金的・軍事的に支援してきた過去がある。中国はタリバン政権の容認と、インフラ建設と引き換えに、「東トルキスタン・イスラム運動(ETIM)」の戦闘員が、中国国内に入るのをタリバンに阻止してもらいたいのだ。
これがうまく行くと、中国はアフガニスタンを一帯一路経済圏に組み込み、中国の勢力範囲にする計画だ。すでに2019年9月、中国、アフガニスタン、パキスタンの外相は、パキスタンのペシャワルとアフガニスタンのカブールを結ぶ幹線道路である一帯一路の「中国・パキスタン経済回廊」を、アフガニスタンまで延長することで基本合意した。
もしタリバンが安定した政権の樹立に成功し、「東トルキスタン・イスラム運動(ETIM)」のコントロールに成功すると、こうした計画は進行し、アフガニスタンは中国の勢力圏に組み込まれる可能性が高くなる。
アフガニスタンは本当に安定するのか?
しかし、本当にアフガニスタンはタリバンの元で安定するのだろうか?
タリバンは以前と変化がなく、いずれ暴力的な統治に戻るので、アフガニスタンが安定することはないという見方も強い。米国防総省や国務省の政策立案者のなかにはそのような意見は特に強い。
それは、タリバンの思想は以前と大きくは変わっていないとする見方だ。
アメリカ軍の撤退で、タリバンはまた元に戻るだろう。アフガニスタンは再び、海外のテロリストたちがかなりの規模のプレゼンスを確保する「テロリストのディズニーランド」と化すことになるとする見方も強い。