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アフガン崩壊は意図的か。日本も巻き添え、アメリカの「敵対国まとめて弱体化」戦略=高島康司

米国の狙いは、中国やロシア国内でテロを引き起こさせること?

さて、ペペ・エスコバルらの調査ジャーナリストが明らかにしたように、「ISIS-K」の結成の背後にCIAの陰があるとすれば、やはりズビグニュー・ブレジンスキーが1979年に実施した計画と同じように、アフガニスタンを混乱させてテロの温床にして、今度は中国を主要な標的にしてアフガニスタンの混乱に引き込むことが狙いなのではないだろうか?

1979年、ソビエト軍はアフガニスタンに侵攻した。これに抵抗している「ムジャヒディーン」と呼ばれるイスラム原理主義の戦士を、アメリカは資金的、軍事的に支援し、アフガニスタン紛争を泥沼化させた。ソビエトはこの戦争で国力を消耗し、1991年のソビエト崩壊の背景になった。

今度は「ISIS-K」を利用してタリバン政権をとことん不安定化させ、アフガニスタンをテロの温床とすることで、中国やロシア国内にテロを引き起こし、国力を消耗させるという戦略なのかもしれない。これは驚くようなトンデモ系の見方のように思えるかもしれないが、「米安全保障局(NSA)」は、アフガニスタン国内のほぼすべての携帯電話の会話を秘密裏に傍受し、録音し、保存する「SOMALGET」というシステムを運用している。国中の携帯電話で行われた、あらゆる通話の保存された会話をいつでも聞くことができる。

アフガニスタン国内で携帯電話やインターネットを一度でも使うと、「SOMALGET」に記録される。タリバンのみならず「ISIS-K」の動きも、CIAやNSAに筒抜けになっている可能性がある。これも見ると、8月26日のカブール空港のテロは、アフガニスタンの情勢を混乱させるために、あえて引き起こしたものである可能性もある。

アメリカが企む4つの世界戦略

まだこれは仮説にすぎないが、もしこれが本当だとすると、残念ながらアフガニスタンでは、これからテロが激増し、もっと混乱するのかもしれない。いま米国務省や国防総省の政策立案者には、ブレジンスキーの弟子のような人々が多い。ブレジンスキーの戦略はいまも生きているのだ。そういう意味では、ブレジンスキーの戦略の概要を確認しておくべきだろう。アメリカの世界戦略のバイブルと呼ばれるブレジンスキーの1997年の著書「ザ・グランド・チェスボード」には次のようにある。

「潜在的にもっとも危険なのは、イデオロギーではなくアメリカに対する不満を共有した反覇権連合である。それは、中国とロシア、そしておそらくイランの大連合になるだろう。これは共産圏のソビエトと中国の連合に匹敵する規模の反米連合になるだろうが、今度は中国がリーダーとなろう。この危機に対抗するためには、アメリカはユーラシア大陸の西と東、そして南の地域で持てる地政学的な戦略を立案しなければならない」

このように主張し、アメリカに挑戦するのはユーラシアの大国であり、それは中国、ロシア、イランの連合になるとしている。そして、この本のほか、ブレジンスキーの書いたさまざまな記事や報告書を見ると、ブレジンスキーの戦略には次の4つの柱があることが分かる。これらは、アメリカの利害の保護を前提に構築された、既存の国際秩序を維持するために必要な項目だ。

1)中国、ロシア、イランの発展の抑止と、それらの国々の同盟関係の破壊
2)ドイツとロシアが同盟することがあれば、その妨害と抑止
3)中国、日本、韓国の東アジア共同体の抑止と、その発展の妨害
4)中東で反米的な独裁国家が出現しないように、中東全域を小国家に分断する(中東流動化計画)

さて、これを見ると、今回のアフガニスタンの混乱は(1)と(2)を目的にしたもののように思われる。

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