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アフガン崩壊は意図的か。日本も巻き添え、アメリカの「敵対国まとめて弱体化」戦略=高島康司

タリバンがアフガニスタンを電撃的に制圧した背景には、アメリカによる意図的な戦略があったとの見方がある。タリバンの思想は以前と大きな変化がなく、いずれ暴力的な統治に戻るので、アフガニスタンが安定することはないという声も聞かれる。再びアフガニスタンが混乱すると、中国やロシアでテロが連続的に発生し、膨大な数の難民の一部はヨーロッパに向かう。その受け入れの中心となる国は、EUのリーダーであるドイツだろう。ドイツとロシアの接近を望まないアメリカにとっては、アフガニスタンからの難民がドイツに押し寄せることは好都合かもしれない。アメリカの敵対国が次々に混乱の渦に入っていく。(『未来を見る! 『ヤスの備忘録』連動メルマガ』高島康司)

※本記事は有料メルマガ『未来を見る! 『ヤスの備忘録』連動メルマガ』2021年9月3日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はぜひこの機会にバックナンバー含め今月分すべて無料のお試し購読をどうぞ。

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アフガン緊迫の裏に不気味な動き?

混迷を極めるアフガニスタン情勢の背後にある、不気味な動きについて解説したい。

もしかしたら、これからアメリカは、中国やロシアの拡大を抑止するために、アフガニスタンを意図的に混乱させるのかもしれない。

アフガニスタンからの米軍排除を目標に掲げて、タリバンは、新政権樹立に向けた動きを加速させている。8月31日、タリバンのスハイル・シャヒーン報道官は、ツイッターで「米兵が去り、我が国は完全な独立を達成した」と主張し、「全ての同胞に祝意を伝えたい」と強調した。その後、カブール市内では花火が打ち上げられ、空に向けて祝意の空砲が撃たれた。

アメリカ軍の撤退直後、タリバンのスハイル・シャヒーン報道官は、記者会見を行い、

1)イスラムのシャリア法に基づき、女性にはすべての権利が保障されること
2)前アフガニスタン政府や軍、そして米軍やNATO軍の協力者への恩赦
3)アメリカをはじめとした国際社会との協調関係を築くこと
4)アフガニスタンに12ある、すべての政治勢力を結集した包括的な政府を樹立すること

などを方針とすることを明らかにし、また、海外からの投資を歓迎するとした。

期限となっていた8月31日までの米軍や多国籍軍の完全撤退、カブール空港で自爆テロを起こした「ISIS-K」との戦いなどの局面で、アメリカはかつて敵であったタリバンと協力せざるを得ない状況になっている。敵と味方が協力関係になるという逆転した構図だ。一方タリバンも特にアメリカとは良好な関係を維持したいと、協力に前向きだ。

パキスタン軍統合情報局(ISI)の動き

このようなタリバンの国際協調路線を強く後押してしているのが、パキスタンの外交政策で大きな役割を果している「パキスタン軍統合情報局(ISI)」だ。タリバンがアメリカや多国籍軍、アフガニスタン政府軍と戦っている間、タリバンを暗黙のうちに支援していたのが、この組織だ。タリバンに隠れ家を提供したり、訓練や武器を提供したり、資金調達に協力したり、負傷したタリバン戦闘員に、近代的な医療を提供したりしていた。

アナリストやジャーナリストは、この「パキスタン軍統合情報局(ISI)」が、戦略的な戦場でのアドバイスをタリバンに提供し、米軍が撤退すると、すぐにタリバンが電撃的にアフガニスタンを乗っ取るように仕向けたと指摘している。

8月24日に発表された著名なアメリカのシンクタンク、「ブルッキングス研究所」が出した「パキスタンのアフガニスタンにおける問題のある勝利」というレポートでは、「ISIがこの夏のタリバンの電撃戦の計画を助けたと考えるのが妥当である」と述べている。

1980年代、「パキスタン軍統合情報局(ISI)」は、ソ連の侵攻に対抗する目的でタリバンの創始者、ムラー・オマルを訓練した。そのような「パキスタン軍統合情報局(ISI)」は、現在、タリバンがカブールで、国際的に認められ、追放や制裁を受けない包括的な政府を形成することに成功するのを支援している。

ロシアと中国は、タリバン主導のイスラム首長国連邦政府を承認することを、明らかにしているが、現在、協力者などの避難を急いでいる米国や西欧諸国は、その立場を明確にしていない。

このような「パキスタン軍統合情報局(ISI)」の動きを受け、パキスタン政府の閣僚や政府顧問は、タリバンを世界的に受け入れてもらうためのシャトル外交に奔走している。タリバン主導の包括的政府が、世界的に認められなければ、世界は「第2の9.11」の危険にさらされると喧伝している。「もし90年代の過ちが繰り返され、アフガニスタンが再び放棄されれば、結果はまったく同じで、テロリストが暗躍する安全保障の空白が世界の平和を危うくする」だろうとしている。

パキスタン政府のアサド・ウマー計画・開発・特別イニシアチブ大臣は、8月29日に「世界は、ソ連撤退後に犯した過ちを繰り返してはならない」とツイートした。

いまパキスタン政府は、タジキスタン、ウズベキスタン、トルクメニスタン、イランを訪問し、タリバンをアフガニスタンの正式な政府として認める地域的なコンセンサスを構築するように動いている。

タリバンが国際的に容認されるように、パキスタンが動いている理由は、アフガニスタンがまた混乱すれば、新たな難民の流入が発生し、イスラム過激派やテログループに活動拠点を与えて、パキスタンが彼らの攻撃の対象になる可能性があると危惧するからだ。

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