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アフガン崩壊は意図的か。日本も巻き添え、アメリカの「敵対国まとめて弱体化」戦略=高島康司

最大の問題は「ISIS-K」

しかし、いまのところタリバンは最大の支援者である「パキスタン軍統合情報局(ISI)」の全面的な支援もあり、タジキスタン、ウズベキスタン、イランなどの周辺国と安定した友好関係を作ろうとしている。また、国内でも、アメリカとも協力し、すべての政治勢力を結集した包括的な安定政権を樹立しようとしている。

もしかしたらタリバンは、本気で安定を望んでいるのかもしれない。

しかし、そうした状況でやはり最大の問題は、IS系の地元組織である「ISIS-K」の存在だ。8月26日、カブール空港で2度の爆発があり、米兵13人を含む180人近くが死亡したテロがあった。この反抗声明を出したのが、ISの地方組織の「ISIS-K」である。

「ISIS-K」はパキスタンの治安部隊に追われてアフガンに逃げてきた「パキスタン・タリバン運動」のうち、分離した強硬派によって創設されたグループだ。「ISIS-K」はパキスタンとの国境付近にある麻薬などの密輸ルートにつながる重要地帯の支配権を巡って、タリバンと対立していた。それと同時に、カブールやアフガンの他の都市で、政府や駐留外国軍を標的にした自爆攻撃を実行した。

さらに、村落の老人たちを残酷に処刑したり、赤十字職員を殺害したりしたほか、国内少数派のイスラム教シーア派系住民社会への自爆攻撃を敢行した。

最近攻撃の標的となったのは、イスラム教神秘主義者のモスクや、送電塔、石油タンカー、カブールでシーア派住民が利用するバス、シーア派が多い少数民族、ハザラ人の女学校などだ。

「ISIS-K」はイラン、アフガニスタン、タジキスタン、ウズベキスタンなどにまたがる「ホラサン州」と呼ばれていた広大な領域に、イスラムの「シャリア法」によって統治される「カリフ国」の建設を目標に、欧米が支援するアフガニスタン政府、そしてもう一方ではタリバンとの闘争を展開していた。

メンバーの多くは、統治の範囲をアフガニスタン一国に絞るタリバンの方針に反対し「ISIS-K」に寝返ったタリバンの元戦闘員が中心だ。カタールの放送局、「アルジャジーラ」が6年前に「ISIS-K」のドキュメンタリーを作成している。英語だが、「ISIS-K」はどんな集団なのかイメージできると思う。ぜひ見てほしい。

「ISIS-K」の本当の実像、CIAの資産

このような状況を見ると、タリバンが国内の政治勢力を結集した包括的な安定政権を樹立しようとしても、「ISIS-K」のような過激な戦闘組織が存在し、自らの残虐性を見せつける無差別テロを繰り返すのであれば、安定政権の樹立は望めないのかもしれない。

しかし、この「ISIS-K」というのは、本当はどのような存在なのだろうか?本当に一般的に言われるように、パキスタンから逃れてきたタリバンの分派が作った組織なのだろうか?アフガニスタンなどの南西アジアの状況に詳しいペペ・エスコバルなどの調査ジャーナリストの記事を見ると、一般に報道されているイメージとは大きく異なる事実が見えてくる。

「ISIS-K」のリーダーはシャハブ・アル・ムジャヒルという人物である。この人物は、タリバンの最強硬派、「ハッカニネットワーク」の中堅指揮官で、都市戦争の専門家である。2020年、「ISIS-K」は、パシュトーン語でムジャヒルの音声メッセージを公開した。しかし、彼はパシュトゥーン人ではなく、実際には中東地域の出身であるようで、アフガニスタンで一般的に話されているパシュトゥーン語には堪能ではないことが分かった。

ところで、イランが支援しているレバノンのイスラム原理主義組織「ヒズボラ」のハッサン・ナスララ事務局長は、興味深いことを主張している。アメリカが ヘリコプターを使って、イラクやシリアでISISのテロリストを完全消滅から救い、アフガニスタンに輸送して、ロシア、中国、イランに対抗する中央アジアの反乱分子として維持しているというのだ。「ISIS-K」には、CIAがイラクやシリアから連れてきたISISの戦闘員が相当数加わっている可能性がある。

現在、カブールでタリバン主導の次期政権を形成する重要な交渉相手となっているハミド・カルザイ元大統領でさえ、一時は「ISIS-K」を米国の「道具」と決めつけていた。

Next: 米国の狙いは、中国やロシア国内でテロを引き起こさせること?

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