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菅政権の通信簿「落第点」の報道は適正か?コロナ対応と経済政策は善戦、前政権や行政機構の遅さが足枷に=澤田聖陽

(2)経済政策:評価60点

<コロナ禍の中での経済政策としては善戦>

経済政策ですが、菅政権下でのGDP成長率の推移は以下のとおりとなっています。

2020年9~12月期:前期比+2.8%、前期比年率+11.7%
2021年1~3月期:前期比▲1.0%、前期比年率▲3.9%
2021年4~6月期:前期比+0.3%、前期比年率+1.3%
(※2021年4~6月期だけ第一次速報値、その他は第二次速報値)

ニッセイ基礎研究所が8月17日に発表しているレポートによると、緊急事態宣言の継続や対象地域の拡大によって、7~9月期も消費の低迷を主因として低成長が続く可能性が高いと予想されています。

また2021年度のGDP成長率は3.1%、2022年度は2.0%(いずれも年率)と予想されており、実質GDPがコロナ前の2019年10~12月期の水準に戻るのは2022年1~3月期であるとされています。

飲食業や宿泊業などに関連する産業は、壊滅的な影響を受けているところもあるのは事実ですが、日本の産業全体では上記のような数値に留まっています。

逆にコロナ禍で伸びている産業もあります。

「コロナ対策が優先か?経済が優先か?」という環境下では、経済だけを優先するような政策を行うことは実質的に無理であり、いわばブレーキを掛けながらの経済政策を強いられる中では、善戦しているのではないかと考えています。

このメルマガでも何度か書かせていただいているとおり、日本はコロナ前の2019年10~12月期から、消費増税の影響でGDPはマイナス成長(年率7.1%減)になっていました。

米国などと比べて経済回復の速度が遅いというような論がありますが、米国が「好調な経済→コロナで経済悪化」という流れだったのに対し、日本は「コロナ前から消費増税で経済悪化→コロナ下でより悪化」という流れであったという差があります。

消費増税での経済悪化は菅政権の責任ではないのですが、消費増税による影響がコロナ禍からの経済回復の足枷になっているという事実は否めないと思います。

<財政政策の実行能力が足りなかった>

一方、財政政策についてはもっと大胆に行うべきだったと思います。

2020年度(令和2年度)の予算について、一般会計予算は102.7 兆円、3度の補正予算で合計約76.8兆円となっており、一般会計と補正を合わせた合計は約180兆円という規模になっていますが、年度内に使いきれずに次年度に繰り越された繰越金が約30兆円ありました。

繰越金の内訳を見ると、コロナ禍で打撃を受けた企業への実質無利子・無担保融資が約6.4兆円、休業要請に応じた飲食店などへの協力金に充てる地方向け臨時交付金が約3.3兆円、停止したままになっている「GoToトラベル」関連の予算が1.3兆円、執行できなかった公共事業費が4.6兆円などとなっており、予算執行を断念して不要となったものも約3.9兆円となっています。

コロナ禍であり、予算編成の正確さより迅速さを求めるという背景は理解できますが、それであれば、企業や個人への支援の執行がもっと迅速に行われるべきであったと思いますし、これだけ巨額の繰越金を残すという状況に陥ったことは問題であったと考えます。

日本の行政機構は、不正が起こらないとか、間違いが無いとかいうことに重点が置かれ、緊急時に迅速に対応するという能力が低いということが証明されてしまいました。

行政機構の対応の遅さも、コロナ禍からの復興の遅さの大きな原因になっていると思います。

このあたりは菅政権だけの責任とは言い難い面もあるのですが、緊急時だけにもっとリーダーシップを発揮しつつ、強引でもよいので推進していくという姿勢があっても良かったのではないかと思います。

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