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自民総裁選は「財源」に触れずに終わった。公約はすべて“絵に描いた餅”となる=矢口新

財政の立て直しも資金が必要

一方で、財政の立て直しは急務だが、年1兆円程度の歳出削減では財政収支が黒字化する見通しが立たない。

例えば、2011年度から2020年度までの平均税収は年53.7兆円なのに対し、平均歳出は年107兆円だ。つまりこの10年間、総税収に匹敵する平均53.3兆円もの財政赤字を出し続けている。

その結果、統計がある1975年度以降から2020年度までの累積財政赤字は1408.9兆円に膨れ上がっている。年1兆円程度の歳出削減では、1000年経っても黒字化しないどころか、常識的には累積赤字は増え続けるのだ。
※参考:財政に関する資料 : 財務省

そこで、私の新著『日本が幸せになれるシステム:グラフで学ぶ、年金・医療制度の守り方』(刊:Kindle Edition)から関連した個所を2項目ほど引用する。

日本の税収の70%は社会保険料など安定財源だが

日本の税収構造(出所:OECD)

図35:日本の税収構造(出所:OECD)

上記の図35は、2017年の日本の税収源と、同種の税収源のOECD平均との比較だ。青色の棒グラフが日本のもの。灰色がOECD平均だ。左のペアから順に、所得税、法人税、社会保険料収入、給与税、固定資産税、消費付加価値税、消費税(付加価値税を除く)、その他となっている。日本には給与税とその他がない。

ここで注意を要するのは、日本の最大の税収源は社会保険料収入(Social security contributions)で広義の税収(tax receipts)の40%を占めていることだ。社会保険とは医療保険、年金保険、介護保険、労災保険、雇用保険の総称だ。つまり、社会保障費の財源とされる日本の消費税は補助財源の位置づけだということになる。<中略>

図35で知れるのは、社会保険料収入40%と消費税収21%、固定資産税収8%を合わせると、日本の税収の7割近くが景気による振れの少ない安定財源に近い形で徴収しているということだ。しかし、前述したように安定財源は景気が悪いときにも容赦なく徴収することで、かえって景気後退を長引かせるリスクが大きいと言える。反対に景気が良くても大きな上振れがないのだ。

また、社会保険料収入に限ればOECD平均の1.5倍以上も徴収している。このことは財政再建のために歳出を削ろうにも、社会保障制度に手をつけなければ難しいことを示唆している。

ところが後述するが、その社会保障制度はすでに崩壊に瀕しており、削減など考えられない状態だ。つまり、社会保険料収入を減らそうとするのではなく、上記の所得税、法人税、社会保険料収入、給与税、固定資産税、消費付加価値税、消費税(付加価値税を除く)のうち、景気後退のリスクが少ない所得税、法人税からの税収増を図ることが不可避であることが分かるのだ。この2つの景気後退リスクが少ない理由は、事業をおこなった結果の給与や利益に、結果に応じて課税するからだ。

では、スウェーデンと並んで消費税率(付加価値税率)がもっとも高いデンマークはどうなのだろう?

日本の税収はOECD内32カ国の平均以下出

図40:OECD各国政府の総支出比較(出所:財務省)

図40:OECD各国政府の総支出比較(出所:財務省)

上記の図40は、OECD内32カ国政府の支出側の比較だ。赤色の棒グラフが日本のもの。日本政府の総支出はGDP比38.6%で中位以下だ。また、日本政府の社会保障支出はGDP比23.6%で、保険料を広義の総税収の6割以上も徴収していながらOECD平均を少し上まわっているに過ぎないことが分かる。それでも社会保障支出を削っているわけではなく、そのほかの支出は14.9%と、最下位から2番目に位置している。このことは、日本は税収が足りないことを意味している。

税収が平均以下の日本政府は当然のことながら多くは支出できない。それでも社会保障支出は削り難いので、そのほかの支出、たとえば、教育への支出などを削っている。これも日本の競争力が低下してきたことの一因だと言える。

総支出でデンマークは4位、スウェーデンは6位だ。社会保障支出もデンマークが3位、スウェーデンが7位と上位にいる。つまり、比較的大きく稼いで、大きく使い、豊かで住みやすい国を実現させている。一方の日本はなにしろ税収のピークが1990年度なので、税制によってジリ貧が宿命づけられたとみなすことができる。

私は、取れるところから取れるときに取るという所得税への依存が、取れないところには与えるという社会保障制度の安定にも、国民の幸福感にもつながっている可能性を見ている。

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