石油販売会社は精製マージンと在庫で利益が決まる
なぜ私がその会社を推奨したのかということについて、これから具体的に説明したいと思います。
まずこの意味を理解するためには、エネオスなどの石油元売り会社のビジネスモデルを理解するところから始めなければいけません。
石油を売っているので基本的にはその売り上げは原油価格に連動するという風に見えるかもしれません。 確かに売り上げだけ見るとそうなのですが、ではこの会社が生み出している利益はどこからもたらされるのかということを知らなければなりません。
まず、日本では石油はほぼ取れませんから、外国から輸入する必要があります。 石油元売り会社が仕切って外国から原油を輸入してくるというわけです。
しかしこの原由、実は原油のままだと使い物にならないのです。 これを例えばガソリンや灯油などにして使うためにはこれを精製しなければなりません。 従ってこの石油元売り会社というのは日本中に製油所を持っています。 この製油所で原油を精製することによってマージンを上乗せしたものが、例えばガソリンならガソリンの販売価格になるわけです。
従ってこの石油の精製マージンというのは原油価格が上がろうと下がろうと常に一定の金額を上乗せして販売できるものなのです。
原油価格が下がったとしても精製マージンは大きく減るものではなく、販売価格が下がるので売上高は下がってしまうのですが、そこから得られるマージン、つまり粗利益に関してはそれほど変わることはないということになります。
よって長期的な視野で見た時には、実はこの石油元売り会社が得られる粗利益というのは原油価格のようにそう大きく変動するものではないのです。
もちろん原油価格があまり上がりすぎると、そもそも誰もガソリンを買わなくなって販売数量が減ってしまいますから、マージンの合計が減ってしまうということもあるでしょうし、原油価格が下がった時にはマージンをパーセンテージでやっていると原油価格が下がった分パーセンテージをかけた時のマージンも減ってしまうということも考えられます。
ただ基本的にはやはり原油価格ほど大きく利益が左右されるビジネスモデルではありません。 常に原油を仕入れて、それを精製することで利益を得ている会社です。
精製したものを海外から輸入するというのはあまりない話ですので、石油精製は国内で必ずやる必要があり、海外との価格競争に陥るというわけでも必ずしもありません。
しかし実際のところは、この石油元売り会社の株価は結局、原油価格に連動する部分がやはり非常に大きくなるわけです。 それは結局、目先の業績・利益が原油価格によって大きく変わってくるからです。
なぜそういうことになってくるかと言うと、今度は会計のからくりを見なければなりません。
まず、在庫の影響というのが大きいわけです。
原油価格が上下しても最終的な精製マージンは変わらないという話をしましたが、例えばガソリンならガソリン価格は仕入れ価格にかかわらず原油価格に連動して上がったり下がったりします。
しかし一方ではその原油をすぐに売るということはできずやはりある程度昔に買ったものを精製して売るということになるので、ある程度昔に買った時の金額が原価として残っているのです。
すなわち原油価格が右肩下がりになっている時は、販売価格は同じく下がるものの、原価としては高い時のものが残っているので、高く買って安く売ることになり、会計上のマージンが削られることになります。
従って原油価格が下がっているときの会計上の利益は、かなり削られてしまうことになります。 だからこそ、赤字ということも起こり得るのです。
しかし、時間が経ってくると原価も下がった時のものになるので、マージンも適正な数字に戻ってきます。
これを長期で見ると利益はあまり変わらないのですが、やはり原油価格が下落している時は会計上の見た目の利益が減りやすいところがあり、株価もそれに反応して下がってしまうことが起こり得ます。 原油価格の上昇時はこの逆のことが起こり、会計上の利益は大きくなります。
これがいわゆる「在庫影響」というもので、会計上の利益というものは大きくぶれることになります。
Next: 寡占化と再編で安定。エネオスは買いか?