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「ネットも繋がっていて、仕事も続けている」ウクライナからのメールで思い知る大国間“戦争ゲーム”の身勝手さと「明日は我が身」=矢口新

大国に振り回される近隣諸国

2020年6月、欧州連合はグアイドが議長・議員職を失ったことを理由に「暫定大統領」の承認を取り下げた。一方で米トランプ政権は、引き続きグアイドを暫定大統領と認めることを表明。バイデン政権も、グアイドを暫定大統領として認めるとしている。

そのベネズエラが、原油価格の高騰に悩むバイデン政権が産油国に増産を要請したり、輸入国の日本などにも備蓄放出を強要したりしていることを受け、米国の金融界に経済制裁の緩和の橋渡しを持ちかけた。

世界最大の原油埋蔵量を誇るベネズエラが経済的苦境に陥っているのは米国が親ロ政権を制裁しているためなので、WIN-WINの提案を持ちかけたのだ。

興味深いのは、米国の交渉相手となっているのはグアイド政権ではなく、マドゥロ政権だということだ。米国でさえ、グアイドに実権があるとは見ていない。
※参考:Venezuela Asks Wall Street to Help Lift U.S. Sanctions So Oil Can Flow – WSJ(2022年3月3日配信)

マドゥロ政権がこうした危機を少なくとも当面乗り切ったのは、1つにはロシアの支援があったこと。もう1つはグアイドに対するベネズエラの人々の支持があまりにもなかったことだ。

仮に、米国がもっとまともな人物を担いでいればどうなったか?ベネズエラの人々も支持し、より良い国になっていたかもしれない。あるいは、本格的な内戦となり、最終的には国家が分裂していたかもしれない。

また、ロシアの支援がなければ、イラクやアフガニスタンで行ったように、米国がいったん武力で制圧し、その後に傀儡政権を作っていた可能性もある。しかし、両国でのそれは多くの犠牲と大きな混乱を生んだだけだった。戦争をビジネスとする人たちを除いては、苦しみだけを残したのだ。

ウクライナの情勢は悲惨だが、アフガニスタンは戦火こそ消えたが、今も悲惨な状態が続き、米国はそれに追い打ちをかけている。

バイデン政権によるアフガニスタン中央銀行の外貨準備を事実上没収するという決定は、既に壊滅的なアフガニスタンの経済危機を悪化させる可能性が高いと、アフガニスタンの銀行家や、エコノミスト、国際支援関係者たちが指摘している。

2月18日に署名された大統領行政命令で、米バイデン大統領は、米国に保管されているアフガニスタン中央銀行(Da Afghanistan Bank)の約70億ドルの外貨準備を差し押さえた。

米政府によれば、その金額を2つに分け、半分はアフガニスタンの人々を支援するために設立された信託基金に移し、残りは当面脇に置いて、裁判で係争中の911テロの犠牲者の家族たちへの将来的な賠償金とする計画だ。

※出典(筆者訳):Afghan Economy Further Imperiled by U.S. Move to Split Assets – WSJ(2022年2月17日配信)

バイデン政権はウクライナに100億ドルの支援を考えていると言うが、米軍が20年にわたって破壊し、ウクライナ以上に困窮し、餓死者や難民が続出しているアフガニスタンにはいまだに経済制裁を続け、彼らの資産すら返そうとはしていない。アフガニスタンは911テロとは無関係なのが分かっているにも拘わらず、没収するのだ。支援に充てると言う半分の信託基金も、米国の意図を反映した支援だろう。

そして、米国による「力による一方的な現状変更」という「国家機密」を暴いたアサンジ氏やスノーデン氏は、犯罪者として追われ、亡命した。

イラクもアフガニスタンも親ロ政権ではなかった。イラクはかつて中東における親米の代表格だったが、サダム・フセイン政権は言うことを聞かなくなっていた。アフガニスタンは長く続いたソ連からの侵攻を跳ね返した後の、米国の侵攻だった。小国の主権は「力」で踏みにじられたのだ。

こうした大国間の戦争ゲームとしてウクライナを見ると、状況がよく分かるのではないか。

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