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グローバル化のもたらす堕落~パナマ文書とタックスヘイブン=施光恒・九州大学准教授

日本企業の間でも、節税はケイマン諸島を利用するのが一種の基本

また、大企業もタックスヘイブンを活発に利用しており、日銀作成の国際収支統計(2008年)によると、日本からの対外直接投資の仕向地は、第一位はアメリカ、第二位はオランダ、第三位はケイマン諸島となっています。

第一位のアメリカは理解できるとしても、第二位のオランダ、第三位のケイマン諸島は意外です。これは日本企業による租税回避の実態を示しています。

オランダにはさまざまな優遇税制があり、国際取引をする際にオランダを経由する節税方策がいろいろ編み出されているそうです。

第三位のケイマン諸島は、いわずと知れたタックスヘイブンです。

志賀氏によれば、日本の企業の間でも、「節税(ときには脱税)の仕組みを考える場合には、まずケイマン諸島を利用するのが一種の基本となっている」とのことです。

そういえば、ケイマン諸島に関しては、最近、こんな記事もありました。

パナマ文書で晒される日本企業“61兆円”ケイマン隠れ資産(『日刊ゲンダイDIGITAL』2016年4月13日配信)

このように、日本の大手企業の間でも、タックスヘイブンを利用した課税逃れは決して少なくないことを念頭に置けば、下記の記事にあるように、財界団体がいまだに消費税率の引き上げを強く主張しているのを見ると、暗澹(あんたん)たる気分になります。

経団連会長が消費税10%は「予定通り引き上げを」と強調 消費拡大を前提に(『産経ニュース』2016年4月4日配信)

同友会代表幹事 消費税「上げないと、日本は不幸な国になる」(『日本経済新聞』2016年4月12日配信)

上記の日経の記事によれば、経済同友会の小林喜光代表幹事は12日午後の記者会見で、来年4月に予定される消費税率の引き上げについて、次のように述べたそうです。

(税率を)上げないと日本は不幸な国になる」「国の借金が増え続けているというこの現実を、もっとみんなが共有しなければならない」。

まさに、「お前が言うな!」と口にしたくなります。
(・3・)ブー

まあ経営者にしてみれば、すっかりアングロサクソン型の株主中心主義が「グローバル・スタンダード」になってしまった現在の資本主義の下では、タックスヘイブンを利用した租税回避をしなければ、株主に突き上げられるという恐れもあるのでしょう。

しかし、そうは言っても、庶民は、マイナンバー制を義務付けられ、ますますきっちりと課税されるよう進んでいるのに、大企業や富裕層の間では課税逃れが横行しているという現状は、不公正であるとしか言いようがありません。格差もいっそう拡大していきます。

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