なぜKyndrylを分社化したのか
Kyndrylの分社化は様々な理由があると考えられますが、具体的には以下のようなしがらみから解放されるためだと考えられます。
インフラ運用でIBMのサービスを利用する際、クラウドは別のプロバイダーを使いたくても「『IBM Cloud』を使ってほしい」と言われる。サービスを選ぶと製品まで決まってしまうのは本当の意味での顧客目線と異なることもあります。真に顧客と向き合うならIBM製品は選択肢の一つにすぎないはずです。であれば独立して最適な技術を使い、顧客の要望にフォーカスすべきだ――そうした考えからスピンオフとしてキンドリルは始まりました。
出典:キンドリルとは何者か? 何ができ、何が新しいのか:CTOが語る設立の狙いと舞台裏 – ITmedia エンタープライズ(2021年12月20日配信)
こちらの記事にあるように、IBMで最も成長しているのは技術サービスなどの分野で、IBM Cloudを前提としたサービス提供ではソリューションの幅が限られるため、IBM Cloudに縛られずさまざまなクラウドやオープンソースのサービスを使い、顧客に提供していきたいと考えていることが大きな理由の一つであると想定されます。
またIBMにとっては、ハイブリッドクラウドとAI分野を強化しテクノロジーとコンサルティングに集中するために、インフラ分野を得意とするKyndrylとの分社化したと考えられます。
IBMとKyndryl双方にとって、分社化が成長に繋がると考えられたと言えます。
AWS, Kyndryl, IBMの売上推移
最後に、AWSとKyndrylを含めたIBMとの売上推移を見てみます。
まずは、AWSの直近の業績について見ていきましょう。
AWSのFY21Q4の売上は、$17.8B(約1.78兆円)、YoY+39.5%と高い成長率を維持しています。
通期売上で見ると、FY21は$62.2B(約6.22兆円)、YoY+37.1%となっています。
過去4年間の通期売上を、IBM、Kyndryl、AWSとIBM+Kyndrylの推移で比較すると上のグラフのような推移になります。
Kyndryl分離後のIBMはFY21にAWSに売上を抜かれてはいますが、Kyndrylを合算した場合は、まだ依然としてIBMの売上がAWSを上回っています。
グラフで見て取れるように、IBMとKyndrylの売上がほぼ横ばい、AWSは年々成長していることを考えると、Kyndrylとの合算売上をも上回るのは時間の問題に見えます。
しかし、ここまで解説してきたIBMとKyndrylの分社化、それぞれの成長戦略が功を奏せば、巻き返しもあり得るかもしれません。
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