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ロシアの知識階級が続々と国外逃亡。ジェノサイド発覚と制裁長期化で経済衰退は確実に=勝又壽良

知識階級がロシアを見捨てる

ロシアの知識階級が、「隣国を侵略する国には住みたくない」という認識で大量の出国をしている。

これは、プーチン氏の哲学に賛成できないという意味だ。ロシアもキリスト教(正教)である。ただ、正教は原始キリスト教の流れを継いでいるために、「政教一致」である。ロシア正教は、ウクライナ正教と対立関係にある。このことが、同じキリスト教徒が戦い合う大きな問題を引き起した。プーチン氏は、ロシア正教と固く結びついている。

こう見ると、プーチン氏の侵略戦争の後ろ盾には、ロシア正教が控えている面も浮かび上がるのだ。

ロシア正教の「政教一致」という教義に対して、賛成できない知識階級はウクライナ侵攻を契機に出国することになるのだろう。その数が、極めて多いのだ。

ロシアのウクライナ侵攻以降、何十万もの専門職の人々がロシアを去っている。その多くが若者だ。人材流出が加速し、西側諸国による制裁の標的となっているロシア経済を一段と脅かしている。

各種調査やエコノミストの見方、出国者のインタビューによれば、ロシアを去る人々の中には、ハイテク分野の人材、科学者、銀行家、医師などが含まれている。彼らの行き先は、ジョージア、アルメニア、トルコなど。ロシアを脱出する人々は、さらに増えるとみられている。『ウォール・ストリート・ジャーナル』(4月11日付)が報じた。

2月下旬にウクライナ侵攻が始まって以来、推計30万人前後の人々がロシアを去ったという。正確な人数は把握されていないが、わずかの期間にこれだけの人々が出国している。2020年にロシアを去った人数は約50万人だった。ここで、過去の出国者のデータを見ておきたい。

2012年のプーチン大統領3期目以降、ロシアを離れる人が増加

2000年:14万5,720人
2005年: 6万9,798人
2010年: 3万3,578人
2011年: 3万6,774人
2012年:12万2,751人
2013年:18万6,382人
2014年:31万0,496人
2015年:35万3,233人
2016年:31万3,210人
2017年:37万7,155人
2018年:44万0,083人
2019年:41万6,131人
2020年:48万7,672人

出典:ロシア連邦統計局/『ウォール・ストリート・ジャーナル』(4月11日付)

このデータを見れば、2012年にプーチン氏が大統領に返り咲いた時から、出国者が急増している。プーチン氏の権力型政治を嫌った国民が、出国したものだ。念のために言い添えるが、旅行者ではない。出国したままの人たちである。

国際金融協会(IIF)は、「ロシアを去った人々、去る計画を立てている人々は、総じて若く、教育水準が高い人々だ。労働力の中で最も生産性の高い部分が消え去りつつある」と指摘している。欧州復興開発銀行(EBRD)は、人材の国外流出に投資と貿易の減少が加わることで、ロシアの生産性の伸びが長期的に低下するとみている。また、情報技術(IT)分野の支出額が、急減すると予想している。これには、外資系企業がロシアへの投資を禁じることのマイナス面も加わる。

ロシアのIT競争力は、国際比較では43位(130ヶ国中:2021年)、ICT(情報通信技術)製品輸出額は37位(172ヶ国中:2019年)である。この状況を見ると、IT技術者の大量出国は、大きな痛手である。ICT製品輸出額で、ロシアよりも下位にランクされているのは、トルコ・ラトビア・エストニア・リトアニアである。

ロシアは、ICT製品輸出でこの程度のレベルにあることを示している。輸出額を増やすには、IT技術者とIT投資が不可欠である。ロシアは、この双方をウクライナ侵攻で失う形となった。ロシア経済の長期的な発展において,ブレーキになることは言うまでもない。

Next: 欧州委は27年までにはロシアへの資源依存を断つ計画

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